今年のコミケは色んな事情があって何時もより一週間早いのはもうご存知でしょう?
一週間早まると一体何が起こるかっていうと、ユニティちゃんこと、大鳥こはくの誕生日がコミケ当日に(マーベラス判定で)ヒットするんだよね!!!
クッ…一体何のために一週間早めたと思って…ゴホン。
いやー、暑い。暑いですね。
あ、申し遅れました。ntnyです。コミケ初日お疲れ様でした。
本日8月13日が企業ブース最終日となりますので、皆さん是非とも西1F ブースナンバー1232 Unity-chan! までお越しくださいね!
詳細はこちらでご確認くださいませ。
Unity-chan! C90 特設ページ
さて、まぁ誕生日が何かしら世界規模のイベントとかぶってるとお祝いを纏めて行われる悲しさをこはくにも味わってもら…ゴホン。
レッツダウンロード! ハッピーバースデーこはく壁紙~!
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え、世界規模のイベントなんか知りません。
彼女何時も走ってますし。飛んでますし。
今回はPSDも一緒に用意しました!こちらはカラーですが、レイヤー属性の都合PhotoShopじゃないとちゃんと出ません。
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Happy Birthday Kohaku Otori!
さてさて、コミケ参加組はそろそろ寝ときましょう!暑さは凄い勢いで体力奪っていきますから!
因みに自分、あの殴って冷たくなる奴三つ装備して行ったんですけど一瞬でぬるま湯パックになりました。
あとデコに貼る系冷却ジェルシートも使いものにならなくて悲しかったです。バッグの中に2枚入りパックx15くらい持ってたんですが。
そのくらい暑いので、マジで無理をなさらなず、辛いなと思ったら休み休みいきましょうね。
それでは、無事この夏を生き抜きまっしょい。
ntny
Happy Birthday to Kohaku Otori!
8月 13th, 2016Unity with VOCALOID インタビュー Vol.06
8月 10th, 2016退廃した世界をイメージしたC89新規楽曲
– C89新規楽曲はどのようなコンセプトで制作されたのでしょうか。
RinC89新規楽曲の中でも、要となるデュエット曲『Halfalogue』は「退廃的な世界に満ちる希望」をコンセプトにしていたので、制作しているうちにどんどんシリアスで派手な曲調になっていきました。歌詞もユニティちゃんとAkazaの掛け合いを意識した配分にしていて、やがて混ざり合い1つになる流れとなっています。
他の楽曲も一部コンセプトの指定はありつつも、退廃した世界をイメージした楽曲になりました。
HALFALOGUE クロスフェードサンプル
– 楽曲の制作はどういった流れで行われたのでしょうか?
Rin『Halfalogue』と『Words for Akaza』で、「歌声の調整方法を明確に変えてみよう」という試みを最初に決めて制作を始めました。
『Halfalogue』はデュエットする角元さんに合わせて、より人間らしいナチュラルな歌い方を重視しています。ビブラートはピッチベンドで全部描いたり、音の区切りをオーディオに書き出してから処理したり。
逆に、『Words for Akaza』はあえてVOCALOIDらしい歌い方を重視するために、なるべくVOCALOIDエディタ内の処理で完結するように調整しています。
– 『勝利のコロッケ』はいかがでしたか?
Rin『勝利のコロッケ』の制作のために、コロッケとメンチカツを結構な量食べ比べたり、メンチカツを銀シャリに乗せて食べたり、食べ合わせの大切さを学びました……。
レコーディングは笑顔の絶えない明るい現場でしたね。台詞部分で「食べている感」を出すために、パンをくわえて録音ブースに立ってもらったり。現場の楽しいノリと勢いで、収録はスムーズに進みました。
「表情を付けて歌おうとする」ユニティちゃん歌声ライブラリ
– ユニティちゃんの歌声ライブラリをはじめて使用した際の印象、その後の使用感を教えてください。
Rin何気なく打ち込んだロングトーンの語尾が人の歌声のようにしゃくり上がったり、表情を付けて歌おうとしたりするのには驚きました。
その後ざっくりと触ってみて、特に難しい処理が必要といった感じではなかったので、素早く制作に取りかかれました。
– 他の歌声ライブラリと比べてどうでしょう。
Rin他のライブラリと比べて、ベタ打ちでの発音がいい感じでした。他のVOCALOID同様に低い音域は苦手だったり、「か」行の立ち上がりに気をつけたりはしましたが、そこは普段通りの調整方法で問題ありませんでした。
声色が可愛らしくて元気なので、シリアスな曲調に合わせると独特のドヤ感が栄えてとてもいい感じに馴染みましたね。
– ユニティちゃん歌声ライブラリを使いこなすポイントはありますか?
Rin他のVOCALOIDよりも音域はちょっと高めで、ロングトーンを意識して歌わせると声の個性が際立っていい感じに歌ってくれます。
Unity with VOCALOID インタビュー Vol.05
8月 10th, 2016「色即是空」――PROJECT:AKAZAで伝えたかったテーマ
– PROJECT:AKAZAについてご説明いただけますでしょうか。
ntnyPROJECT:AKAZAはVOCALOID Unity-chan!を取り巻く一連のワールドの総称です。
ntny世界観を大雑把に説明すると、時代背景はユニティちゃんの世界から更に数百~数千年後です。当然ユニティちゃん(大鳥こはく)は死んでいます。
では「彼女亡き後のコーゲン・シティは本当につまらなくなるか?」と言うとほぼ100%「No!」です。
この時点で、現メインフィールドである「小碓学園時代の未来」とは進む方向が変わっているわけですね。
PROJECT:AKAZAの舞台は絵にかいたようなディストピア。小碓学園時代~AKAZA時代の間に何があったかを想像してストーリーを考えてみてもらっても楽しいかもしれません。
(公式は何も用意していませんのでこの間に「正規ルート」は存在しません)
AKAZA時代、つまりユニティちゃんがいなくなった世界では皆創作疲れを起こしています。
それはアイデアが出てこないという意味ではなく、生まれた作品を外に出すことに恐怖、あるいはただ物を作って外に出したいだけなのに鬱陶しい人間が絡んできてその対応が面倒くさくなってしまっているんです。
これは今の僕らの時代でもすでに起こっていることです。
最初はニコニコやYouTubeコメント欄による「ただの好き嫌い論争」でした。
それがエスカレートしてアーティストのメールアドレスやTwitter、Facebookといったソーシャルな場にまで凸ってくる人が増えると作家はもう面倒なので物作るのを止めるわ、となりますよね。
ユニティちゃんによって創作者の数は凄く増えた。でも、増えすぎてしまった。これがAKAZA世界の始まりです。
たくさんの作品や動画が色んなところに発表されるようになったのはとても良いことです。ですが、同時にそれは「好き嫌い論争」のターゲットにされてしまうことでもあります。
恐ろしいことに、その「好き嫌い論争」は好きや嫌いといった感想を持ってすらいない人まで参加してきます。
作家の多くは基本的に「好き」、「嫌い」については感情的な嬉しさの違いはあれど、評価としてはどちらもしっかり受け止められるのですが、「作品に対する感想、感情ではなく、場の雰囲気で寄ってくる人」を相手にするとき「本当に」疲弊するのです。
こういったアーティストとファン、アンチによる戦いが長く続いた結果、アーティストは作品を発表することに疲れます。
ではファンはどうなるかというと、作家の作品が好きだった人は作家を貶した(あるいはただ嫌いと言っただけの人すら相手にして)人と喧嘩を始めるのです。
つまり「お前らがあんまり言うから〇〇が作品を作らなくなった!」と。
違うのです! 我々アーティストからするとファンもアンチも自分に熱意を向けてくれている大切な人達なのです。
あなた達はケンカしなくていい、我々を本当に疲れさせるのはあなた達ではないのだと。でも、もうそれすら言うのも面倒くさくなってしまった。
結果としてファン、アンチもまた「何も言わない」ということに落ち着いてしまいます。
これがAKAZA時代の「創作疲れ」です。
でも当たり前ですけど、人は娯楽を求めますよね?
捌け口を失った人がどこに矢を向けるかっていうと、多くは自分を管理している偉い人に向かうわけです。
そしてこう言いました。「誰か、これが一番いいって物を決めてくれ!」
そうして「どっかの偉い人」が生み出したのが「AKAZA」です。
ここからの流れはテキストを読んでいただいた方が正確に伝わると思うので、こちらを読んでいただければと思います。
(ちなみにコアなテーマ以外は未完成、生の制作メモです)
– その一連の流れがPROJECT:AKAZAだと。
ntnyそうです。
因みにこれらはC89の時点ですでに存在していたものなので、出そうと思えば出せました。
ただ結構ナイーブなネタであるのも事実なので、一旦落ち着いて見直してからにしよう、と言うことで今まで伏せていたのです。
テキストを読んでいただければわかると思いますが、PROJECT:AKAZAの本質(テーマ)は「作品を生み出すことを恐れないで! 評価することを恐れないで!」です。
PROJECT:AKAZA自体がVOCALOIDやAKAZAのことではなく、このテーマのことを指しています。
– つまり、PROJECT:AKAZAはバックグラウンドのメッセージを示していると。
ntnyそうです。
AKAZAはサンスクリット語で「空」という意味があります。
これは「色即是空・空即是色」の「空」です。この言葉の意味は各々が持つべき物なので「こうです」と説明することは出来ません。
(ちなみに「色即是空・空即是色」は自分の座右の銘でもあります)
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ユニティちゃんの生みの親の苦悩が生んだAKAZA
– キャラクターとしてのAKAZAについても教えてください。
ntnyぶっちゃけた話をすると、ユニティちゃんがVOCALOIDになると言われたときに自分は反対しました(苦笑)
これ、クラスタに属している方こそ自覚していないケースも多いんですけどVOCALOIDって本当に、凄く巨大なんですよ。
初音ミクは知っているけどVOCALOIDだって知らない人がいるって言われて信じられます?
自分も以前一部の特異なクラスタに浸かっていたことがあるんですけど、そこにいると自分の持っているメジャーと世の中のメジャーの単位が違うことに気づかないんですよ。
近くで見ているか遠くで見ているかの違いというか、定規って目に近づければ1mm、1mm…1cm、10cm、みたいに区切られているのがわかりますけど、目から離して1cmが1mmに見えるくらいの距離に置いた場合って、その定規を測定するための定規が必要になるんです。
今どのくらい離しているかっていう。クラスタにどっぷり浸かっていると、その定規を図るための定規の存在を知れない、気づけない。
逆に巨大な物を見慣れていると今度は「1mmなんて誤差」って思えてしまう。これが怖いんです。
何故ならクラスタにいる方々はその「1mm」どころか更にその下の単位まで見ているし、重視する。
お互いに持っているメジャーの違いを理解しないまま土足で入り込んでひどい目に遭うことって結構見てきましたし、体験もしました。
ゆえに、すでに巨大な物となっているVOCALOIDという分野に入り込むことにはとにかく慎重を期したかったのです。
大前が先にも言っていますが、VOCALOIDになれることはひとつのキーワードではありましたし、自分としてもいつかは……と思っていましたがまさかこんなに早くなろうとは。
ユニティちゃん自身の時間と言う意味でも、自分自身の時間と言う意味でも、とにかく足りなかったんです。
さぁ困りました。
自分はユニティちゃんというキャラクターを作り出しましたが、それは全てゲーム開発者のための物として設計されています。
VOCALIOD向けのキャラクターとして設計している部分はほぼない。
となるともう「ゲーム開発者のためのデザイン」を捨てるところからだと。しかしこれが結果として自分すらも混乱させることになりました。
– その落としどころとしてAKAZAが生まれた?
ntnyうーん、これも最初のテキストありきの話になるんですが、あの中に出てくる「どっかの偉い人」の側面で言うとそういうことになります。
自分でもわからなくなっていたところに、絵としてポンと「良い」のが生まれてしまって。でもこの段階で彼女は中身を何も持っていなくて。
だから今回はテキストや設計より先にビジュアルが生まれているんです。
最初のオーダーとして「デュオで歌う」というがあったので、ユニティちゃんという存在を反転させるところからだったんですが、ある意味目的としてもコンセプトとしてもそれは正しかったなと思います。
– 今回の歌声ライブラリは、ユニティちゃんの歌声ライブラリなのか、それともAKAZAの歌声ライブリなのでしょうか?
ntnyうーん(笑)
PROJECT:AKAZAの世界としてはAKAZAの声でもあり、そのAKAZAの元になっているのはユニティちゃんであり。
唯一つ言えるのは、この二人は「オナジモノ」であり、ユニティちゃんの歌声ライブラリでもあればAKAZAの歌声ライブラリでもあります。
DL版パッケージに二人入っていることで「二人分入っているのでは?」と、誤解を招いてしまったことは申し訳なく思いますが、どちらも「彼女」です。
– その辺りを補完する公式設定を充実させていくおつもりですか?
ntny作りますよ。
ただそれが小説であるか、ドラマCDであるか、ゲームであるか、はたまたアニメであるかは現時点では未定です。
– もし、二人がドラマCDなどで共演するとして……ユニティちゃんは角元さんがやるとして、AKAZAはVOCALOIDがやることに?
ntnyきっとAKAZAは喋りませんね。AKAZAは喋らない方が面白いと思う。あんまり喋らせると折角の美味しいポジションが無くなっちゃうし(笑)
それに、VOCALOIDは世の中の人たちからするとキャラクターですけど、僕にしてみれば「どっかの偉い人」同様、唯のシンセサイザーなので。
– 楽器なんですね。
ntnyあくまでも僕にとってですよ。
あまりキャラクターに語らせ過ぎてしまうと「AKAZA(のキャラ)にこの曲は歌えない」みたいなことを思い始めちゃう可能性がある。そうなると本末転倒じゃないですか。
これって中期VOCALOIDクラスタで実際に起こっていた話ですよね。初音ミクとかの創作が増えてきて、UGCの特徴としてそこに生まれた共感がパワーになって「常識化」していく。
常識化していくと、その常識から外れようとすると「非常識!」って言われる。そうして離れていった人を何人か知っています。
そういった文化を知らずに入ってきて好き勝手やる人を凶弾するような時代があったんです。作った側は「あぁ、何てことだ」って思っていたんじゃないかな。
少なくとも自分は何処まで行ってもVOCALOIDは楽器であってキャラクターという認識は持っていません。例え初音ミクであっても自分にとっては唯の楽器です(ちなみに発売当日に買いました)。
でもAKAZAはユニティちゃんに出会ったことできっと変わってしまいますね。
彼女は自己を持ち始めるでしょうし、その先については「どっかの偉い人」は知りませんしきっと関与もしないでしょう。
僕個人としては褐色銀髪が大好物なので色々なAKAZAを描いてみたいところです。
– AKAZAはどういった経緯であの容姿になったのでしょうか。
ntnyラフスケッチを見ると肌色が褐色ではなく白人っぽいんですよね。
ntny最初期は「ユニティちゃんの亜種」として考えていたのでこんな感じになっているんですが、それらを一旦リセットした段階で褐色にすることを決めました。
これ、日本のキャラクターシーンだと結構嫌がられるんですけどUnityなら何の問題もなかろうと、誰の許可を得るでもなく進めていました。
ntny日本の場合って女性キャラクターをメインとしているコンテンツの多くは女性キャラクターだけを増やしていくじゃないですか。
自分はそれが嫌でしょうがなくて、最初から男キャラクターをちゃんと仕込んでいっているんですが、まぁ皆黄色であったり白であったりといったところはやっぱり国内向けなんですよね。
次に出すべきキャラクターがいるとしたら褐色だと。
海外の人からすると肌の色って凄く重要なんです。まぁ我々にも言えることではあるんですけどね。「結局白肌ばっかりじゃん?」って。
ちょうどユニティちゃんと対に立たせなければならない条件があったので、これはしめたとばかりに褐色銀髪を投入しました。
出来たイラストの凄く不満を持っていそうな顔が最高に気に入っています。
– 日本では公式から出たキャラクターはあまり疑問を持たずに受け入れる傾向にありますか?
ntnyそうでもないですね。
やっぱり「AKAZAって何?」って質問は多かったです。海外からも結構ありましたけど、日本でも普通にありました。
まぁそりゃ何の説明もないので当たり前だよねって感じですが。
(勿論順序立てて出したかったんですけどね、これも反省点です)
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Comic Market 89のユニティちゃんとAKAZA
– C 89で販売されたPROJECT:AKAZA スペシャルパッケージ(ユニティちゃんの歌声ライブラリ)はかなり豪華なつくりになっています。
ntny先に値段が決まっていたんです。でも一個の売り物として、10,000円っていう価格ははじめてで。
今回の場合、シリアルコードしか入っていないものに対して10,000円を払わせるんですよ!
開けた箱の中に、紙が1枚しか入っていないわけじゃないですか。まるでオンラインストアのギフトカード状態ですよね。コード入力したらゴミ箱行き。
それが嫌で、とにかく嬉しい感じがするものにしたかったんです。例えばインテリアの様に飾っておけるものとか。
ちなみにこのアクリルプレートはAKAZAの背中にある黒いプレートを模しているんですよ。
– C89では3曲、新規楽曲も作られています。その制作をRinさんにお願いした経緯というのは?
ntny基本的に楽曲を作るときはまずDiverseSystemの主催である与作氏に話を持ちかけています。彼とは長い付き合いなので、こちらの要求に対する回答が的確なんですよね。
で、まずVOCALOIDを使えること、次に生歌収録のディレクションができ、経験があることを条件に人を探してもらいました。
この2つの条件にマッチしていて、さらにゲームミュージックの製作の経験もあって、かつ、音ゲーにも音楽提供していて、知名度もある。
実際にいくつか曲を聴いてみて、素直に「あ、カッコ良い!」となったので「他の候補も探す?」という質問に対して「この方で!」となりました。
– 曲のコンセプトは、ntnyさんがディレクターとしてオファーを?
ntnyそうです。『HALFALOGUE』はユニティちゃんと世界観を説明して上がってきたものです。
歌も全部そのままお任せしちゃったので、ほぼ直すところもなく。音の部分だけ少しいじらせてもらったくらいですね。
2曲目の『WORDS FOR AKAZA』は特に何のオーダーもしませんでした。
実はRinさんに3曲お願いしたら、5曲ぐらい上がってきたんですよ(笑)
「どれが良いですか?」って言われて。メインテーマはこれが良い、2曲目はこんな感じ、3曲目はこんな感じ、みたいに選んでそれを仕上げてもらうっていう流れだったんです。
『WORDS FOR AKAZA』の歌詞はAKAZAのことを扱ってほしいとオファーを出して、文字通りVOCALOIDのみでAKAZAに歌ってもらったわけですね。
最初の『HALFALOGUE』はすごく生っぽかったんですけど、『WORDS FOR AKAZA』がVOCALOIDっぽくなっているのはたぶん意識しているんだろうと思います。
– 3曲目の『勝利のコロッケ』については?
ntny3曲目は、大前が「電波系の曲が欲しい!」と言ったので(笑)
これは前回もそうなんですけど、三曲目は一寸ネジ飛んでいる感じっていうのが定番になりつつありますね。
この曲はSEも結構凝っていて「ジュワー」とか音が入っていて「本当に作ったの!?」と聞いたら「これコロッケじゃなくてから揚げの音です」って言われたのは面白かったです(笑)
– YouTubeで聞けたりします?
ntnyYouTubeにクロスフェードサンプルがありますが、フルバージョンではないので上げている音は聴けないかもしれません。
HALFALOGUE クロスフェードサンプル
ntny実は、1曲目の『HALFALOGUE』の曲名が最後まで決まらなくて。収録後に与作氏、Rin氏と自分の三人で秋葉原のしゃぶしゃぶ屋でああでもないこうでもないと肉をつついていました。
最終的にはそれから少しして、色々調べものをしている時偶然見つけた『HALFALOGUE』に決まったんです。
あまり聞かない言葉だと思うんですが、この意味はですね。
先ず携帯電話で話している人がいるとします。その人を見たとき、当然電話の向こうが何を言っているのかは聞こえないですよね。喋っている人の声しか聞こえない。
この「繋がらない会話を聴いていることに苛立つ現象」のことをHALFALOGUEと言うらしいんです。意味深な感じしません?
ユニティちゃんの声って角元さんが目の前にいれば聴けるんですけど、AKAZAの声って絶対にスピーカーを介さないと聴くことが出来ないんですよ。ふふふ。
– このCDはもう手に入らないんですか?
ntny現在はそうですね。ただ、今後イベントや通販で出す予定はあります。
ユニティちゃんの今後の展開
– もし、PROJECT:AKAZAのキャラクターデザインやバックグラウンドの考証からもう一度やれるとしたら、どこから手をつけますか?
ntnyバックグラウンドはめっちゃ気に入っているんで変える気はないですね(笑)
変えるとしたらユニティちゃんの服かな。
先にも話した通り、今回はユニティちゃんより先にAKAZAができたので、ユニティちゃんはAKAZAに合わせて考えられてしまった。
それは彼女にとってのベストではなかったので、もう確定事項として宣言しちゃいますけど「彼女にとってのベスト」を考えるつもりです。
– まだ手を付けてないもので、今後のユニティちゃんの展開としては何を?
ntny一般流通に乗るフィギュア化はしたいですね。
アクションフィギュアだと尚いいかも。個人的にはパルフォムやfigmaが大好きなのでPhat!さん、グッスマさん、いかがでしょう?(笑)
ntnyこれもありがたい話ではあるのですが『乖離性ミリオンアーサー』とのコラボレーションの影響が非常に大きくて。
ユニティちゃんを調べた人たちは大体一度『UNITE IN THE SKY』のPVを観に行くんです。そうすると、みんなこれが原形だと思うんですよね。
それもあって、今回のC89ではオリジナルの配色に戻しつつ、一寸未来っぽく……と思って挑んでいたつもりだったんですが、正直あまり上手く持っていけませんでしたね。
まぁ失敗したところでキャラは生き続けるので、もう1回やればいいだけなんですけども。
同じことやってもしょうもないので、一寸気合いいれてかっちょいいの作るんで、楽しみに待っていてください。
全国109店舗のVR THEATERでCRSが稼働中!(特典あり)
8月 8th, 2016全国のネットカフェで体験出来るバーチャルリアリティ映画館「VR THEATER」に、2016年8月1日から「Unity-chan!Candy Rock Star ライブステージ!」が追加されたよ!
全国109店舗のネットカフェでGear VRを使ったユニティちゃんのリアルタイムVRライブパフォーマンスを体験できるので、未体験の人は良かったらどうぞ!
体験出来る店舗一覧は、下記のVR THEATERのホームページから確認してね。
また、店舗のVR THEATERでCRSを体験すると、以下のフライヤーを貰えるぞ!※1
このフライヤーをコミックマーケット90の西1-1232ブース「unity-chan!」に持っていくと、なんと5000円以上お買い上げの方にのみプレゼントの「マイクロファイバーメガネ拭き」を、無料でプレゼントしちゃうぞ!※2
※1 フライヤーの配布数には限りがあります。
※2 マイクロファイバーメガネ拭きは、数に限りがありますためお一人様合計1枚までのお渡しとなります。予めご了承下さい。
楽曲CDとドラマCDのVol.1が無償公開決定!
8月 6th, 2016な、なんとコミックマーケット90を前にして、大好評のうちに販売終了したキャラクターソングCD「UNITE IN THE SKY」とコミックマーケット88で発表した記念すべきドラマCD第一作「大鳥こはくの夏休み!」がユニティちゃんライセンスで無料公開されたぞ!
「UNITE IN THE SKY」はunity-chan! Candy Rock Star ライブステージでおなじみの曲!その他にもこはくちゃんの鼻歌が可愛い「twilight」と、なんとUnityのプログラムをそのまま歌にした「HelloUnity.js」も入ってるから、どっちも聞いてみてね!
ドラマCD第一作「大鳥こはくの夏休み!」には、去年の夏休みにこはくちゃん一行が体験したドタバタな夏休みの様子を収録!「新聞部の企画でみんなと一緒にバカンスに行ったんだけど、飛行機は故障するわヘンな無人島に不時着するわで大騒ぎ!うーん、まぁ、あれはあれで楽しかった!」だそう。
今年のコミックマーケットでも新曲&新エピソードも発表されたので、今から聞いてコミケに向けて盛り上がっちゃおう!C90の新作「Present Day, Present Time.」・・・どんな曲とエピソードなのか、いまから楽しみだね!
もちろん、公開されたどちらのデータもユニティちゃんライセンスで公開されているので、ゲームやアプリの作品で使うこともできるよ!
Unity with VOCALOID インタビュー Vol.04
8月 5th, 2016UnityとVOCALOIDがつながることの意義とは
– UnityにVOCALOID SDKがのることに、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンはどんな意義を感じましたか?
小林一番大きなものとしては「音楽関係のゲームを作りたい」というのがあります。音楽関係のゲームを作るというのは、技術面で特許が問題になってくることが多々ある。Unity with VOCALOIDでオープンになったインタラクションはそこを打開するきっかけとなる可能性が高いんです。そこの基本技術をヤマハが公開してくれることほど、安全なことはないんですよ。そこで作るゲームは基本的に安全なわけで。
それから、Unityがゲームを越えてインタラクション的なものに使われつつある中で、リアルタイムに音を変化させることができる要素が入ってくるのは重要だと思いました。音とのインタラクションは、ずいぶんUnityでもやっているのですが、例えばその中で「歌声までも変えることができれば大きいよね」というのがもともとあって。歌は音の中で唯一、キャラクター性があるものじゃないですか。そこに関してアプローチできるのは面白いと思っていたので、ヤマハからお話をいただいたときは願ったり叶ったりでしたね。
エンジニアにとって音は難しいものであると思っているので……今後どうなっていくのか楽しみでもあります。もし、自分がコンシューマー向け企画者だったら、ワクワク、ドキドキだと思いますよ。
– 山本さんはUnity with VOCALOIDの開発を担当されていましたが、プロジェクトが始まってからローンチまでの半年、最初の作業はどんなことをされましたか?
山本ヤマハの保有するVOCALOIDの技術を最新のUnityの環境で動かすことをはじめにやりました。UnityからVOCALOIDのプログラムを叩いて、歌声を合成するところです。
それと、Unityはさまざまなプラットフォームに対応しているので、我々の対応できる範囲でプラットフォームの拡充をおこなっていきました。
– 松澤さんはどのような業務を行っていたのですか?
松澤私はエンドユーザーからクリエーター、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、ヤマハ、その中での交通整理といいますか、リレーションをどうとっていくかを主に担当していました。SDKそのものの企画はエンジニア主体なのですが、それをどんな風に打ち出して、みなさんに迎えてもらいたいのか、そのプランニングが主でした。
VOCALOIDはあくまで楽器、作り手が面白いものを作る
– UnityにVOCALOID SDKが搭載された結果、これからいろんなことができるようになると思うのですが、ヤマハはどうお考えでしょうか。
石川それは難しい質問ですね。ヤマハ自身があまり語らない方がいい面もありますので。
– あくまで楽器を提供したのであって、それを使って何を奏でるかは使い手次第だというところですね。
石川そうです。
– Unityにとっては新しい方向に行くための、強いツールですよね。
小林実際、SDKに入っているリップシンク用のコンポ―ネントを使って、さっそくこの2週間ほどで遊び倒している人もいます。中にある仕組みを見たら、「こういうことができるじゃないか」と発見されている方がたくさんいらっしゃいます。
そういう意味では声や音の技術がやはり一番難しいもののひとつなので、そこをまだみなさん手探りで鉱脈を掘っている最中じゃないかと。そこから新しいものが出てきたら面白いことになるのではないでしょうか。
– いままで、そこに触ることすらできなかったところに、自由に使えるものが出てきたので、これから掘り下げられて面白いものが出てくるのではないかと。
小林そう思います。少なくとも歌にあわせて口パクさせるのであれば、VOCALOIDに歌わせてあわせてしまった方が楽でしょう。そうでないと、音の中から波形を合成して、すべてチェックして合成する個人技がいりますから。
– そういったSDK公開後におもしろい使われ方をしている例は他にございますか?
小林まだ公開されていませんが、あるところで音ゲーが作られているらしいです。
– ちょうど先週、48時間でゲームを作るGlobal Game Jamがありましたが、来年にはVOCALOIDを使って参加する方が出てきそうですね。
小林声や音に関するテーマが出たら、かなりの人が使ってくれるでしょうね。そのためには普段から慣れておかないといけませんが……。
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今後は歌声ライブラリの拡充、多言語展開を視野に
– 今後のUnity with VOCALOIDの展開はどのようにお考えでしょうか?
山本直近としてはAndroid対応を進めて提供するのが一番の課題です。SDK自体の話ではないのですが、歌声ライブラリの拡充も重要視しています。ヤマハの歌声ライブラリもそうですが、パートナーさんの歌声ライブラリも増やしていければと思っています。
あわせて、Unity向けに新しく歌声ライブラリを作りたいという新規の案件にも期待しています。
石川歌声ライブラリの、さらにその先の多言語対応ですが、VOCALOIDはすでに日・英・中・韓・スペインの5か国語に対応できています。まずは今回、日本語からなのですが、他の言語をいつ、どうやって入れていこうかと。言語と発音の辞書だけじゃなくて、その言語の歌声ライブラリをどのように収録して揃えていくかというのもありますので、そこが次の課題になってくるかと思っています。
我々もまだ日本語でしか情報を出せていないので、海外のファンの方々がやきもきしているというか。情報に飢えている感じはありますね。「SDKって何?」というのもよくあったりします。
– そこも含めて今後多言語展開をしていく、というところですね。ちなみに、多言語化は大変な作業なのでしょうか。
石川いえ、基本的な仕組み、VOCALOIDそのものは言語によらず、変換された音素を実際の声で滑らかにつないでいく技術なので、辞書を入れ替えるだけです。実のところ。
– そういう意味では早いタイミングで出せそうですか?
石川そうですね。むしろ、そこにつける声をどうするか、そちらが難しいですね。
小林本当にリアルに使うとなると、日本語と英語で音素の数が違いますから。
石川英語は5倍ほど音素があります。既存の歌声ライブラリに歌わせるのか、ユニティちゃんに英語を歌ってもらうのかをいま考えています。
– 企画の話になってきますが、ユニティちゃんの英語版は考えていますか??
小林興味はあります。ただ、そこで難しいのが角元さんのネイティブのイメージが必要だということで。ユニティちゃんのイメージは壊したくない。でも、間違いなく日本人がやると違ってきます。ヤマハのCYBER DIVAという英語の歌声ライブラリがよくできていたので、おそらく英語の歌声ライブラリとしてはあのレベルでなくてはと思いますね。
– CYBER DIVAはネイティブの方に録っていただいたのでしょうか。
石川そうですね。ネイティブの方に声を提供していただいて。
小林もしやるとしたら、ネイティブの方を何人かオーディションさせていただいて、そこからユニティちゃんのイメージに近い声を選ぶことになる。だから、むしろ役者さんになっちゃいますね。当然、日本とアメリカでは声の役者さんの数が全然違いますから結構大変ですよ。
– 海外ですとVOCALOID契約はあまりメジャーではないでしょうから、そこも大変そうですね。
石川そもそも、VOCALOIDの歌声ライブラリの概念的なものから説明しないといけないですね。
– SDKの多国語展開の他には何かお考えですか?
山本VOCALOIDは単純に音と歌手を入力して、再生すれば歌ってくれますが、その歌い方にも表情付けがいろいろできまして、それでクオリティが大きく左右されるものになっています。その歌い方をコントロールするモデルのようなものを作成して、いろんな歌い方ができるようになってほしいと思います。
シンギングスタイルという歌い方のモデル定義をしたPC向けのプログラムがあって、これに通すと、元となった歌い方に近づけることができるようになります。そういったものをUnityでできるようにしたいと考えています。
Unity with VOCALOIDが生み出す新しいコンテンツ
– Unity with VOCALOIDによって、ゲームとより密接した、今までにないVOCALOIDの使われ方が出てくると思うのですが、どんな風に使ったら面白いと思われますか?
松澤普通は音ゲーのような使い方が最初にくると思うのですが、育成系とかも面白いですよね。最初はうまくない歌い方だけど、頑張っていけばきちんと歌ってくれるようになるとか。そういうインタラクティブ性を活かしたものもいいですね。
山本歌にはキャラクターがいて、そこに感情があるものなので、やはりそこの部分を体験者自身の感情とリンクさせて歌い方が変わるとか、VRと組み合わせるとか。そういったことができるとすごく面白い、世界が広がると思います。
– バーチャルライブやメディアアートのような尖ったものが出てくるのかもしれません。
小林メディアアートに関してはいろいろな組み合わせ方や夢がありますね。C89でTLFスピーカー(※薄くて軽くて曲げられる、ポスターのようなスピーカー)をお借りしたのですが、ああいったものと組み合わせると面白い体験ができると思いました。
石川空間が作れますからね。
小林20個を同時に立てることができるのでバーチャルアイドルのコンサートも本気でやればできるわけですよ。
石川スマート家電にVOCALOIDがのっていくと、夜な夜な冷蔵庫と電子レンジがハモっていたりする面白い世界ができるかもしれません。テレビの歌番組を流していると、それに合わせてハモる冷蔵庫とかが作れるわけですよ。
– いままでに、VOCALOIDそのものを広めるユーザー参加イベント、あるいはレクチャーをするイベントやセミナーはどんなものを実施されてきましたか?
石川音楽制作という意味ではいわゆるDAW(Digital Audio Workstation)と呼ばれている制作ツールとVOCALOIDを組み合わせて歌ものを作るセミナーをやらせていただいたり、専門学校さんに入れていただいたりはありますね。そこがいよいよインタラクティブとかゲームエンジンとかが入ってきて、新しい領域になりますので、どういう形でどんな方に届けていったらいいのかが次の課題ですね。
– ゲーム専門学校とかゲーム開発寄りなのか、それとも音楽側なのか、ですね。
小林それは非常に難しい問いですけども、おそらく今後のゲーム開発者はいろいろなことを知らなくてはいけないですね。ただ、間違いなく興味のある方はやっていますからね。
– 企画されているユーザー参加イベントはありますか?
石川まだ時期は決まっていませんが、Unity 道場の中でターゲットを決めさせていただいて、まさに今の話ですが、音楽制作とゲーム・アプリ開発双方のクリエーターさんが来られるようなセミナーをぜひやらせていただきたいと思っています。
小林Unity 道場自体は、単純にUnityの勉強会だけではなくて、Unityに関わるゲーム開発全体の話を広く取り上げる予定があります。例えば、Unity with VOCALOIDの使い方はもちろん、そもそもVOCALOIDを使ってどう作曲するか、といった話とか。そんな事例の話をしても全然いいと思っています。重要なところだと思いますので、今後広げていきたいですね。
Unity with VOCALOIDに触れる人たちへ
– Unity with VOCALOIDをこれから触ってみようと思っている人たちに伝えておきたいメッセージがあればお願いします。
石川いろんな歌を歌わせることによって、人間はその歌を通じてどんなコミュニケーションを取っているのか、歌がどう感情に働きかけているとか、受け手はどう受け止めているのかとか、歌を中心としたコミュニケーションの仕組みが明らかになるかもしれません。それは我々VOCALOIDチームにとっての究極の目的のような気がしています。なぜ我々は歌を歌うのかとか、歌を聴くと共感ができるのか、そのメカニズムが明らかになるかもしれないんです。そこに向かう第一歩として、インタラクティブという歌うエンジンがUnityにくっついたというのが偉大な一歩になったらいいなと。
松澤ゲームを作っているエンジニアの方たちに、音楽制作にも興味を持っていただけると嬉しいです。道筋としては、エンジニアの方がプログラミングをしてアプリケーションを作るのと、音楽制作ソフトで打ち込んで音の出力を得る作業は似ていると思うんですね。音楽の制作は多くのエンジニアにとって、遠い世界、難しいものと感じられると思うのですが、これを機に興味を持っていただいて何かを生み出していただけると面白いと思います。
Unity with VOCALOID インタビュー Vol.03
7月 29th, 2016Unity With VOCALOID プロジェクトが
スタートしたきっかけ
– Unity With VOCALOID プロジェクトがスタートしたきっかけを教えてください。
石川まずはVOCALOIDについてお話をさせてください。VOCALOIDそのものを発明したのは先代プロデューサーの剣持 秀紀で、「音楽制作の中でヴォーカルパートも作れるものを」というところからはじまったのですが、いろんな形でみなさんに受け入れていただいてひとつのムーブメントになったあとに、「音楽制作はいわゆるパッケージコンテンツだけじゃなくてインタラクティブコンテンツの領域まで、楽曲制作ではなくて、UXを演奏していく部分にも歌声合成って使っていただけるのではないかな」と、そういう想いがあったんです。私が後任で来たときに、「そういうテーマでチャレンジしてみたい」とプロジェクト内で話をしたら、メンバーが賛同してくれまして、そこから企画を始めたのがきっかけです。
– VOCALOIDカルチャーに対するアプローチのひとつとして、このUnity With VOCALOIDが出てきたということですね。それでは、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとヤマハは、いままでどのような関係があったのでしょうか?
小林実はヤマハとは色々なところでお付き合いがありまして、ヤマハ発動機とは、Unityのゲーム以外の利用事例を発表していただいたことがあります。それを皮切りに、他に非ゲームではどんな事例があるのかと調べてみたら結構いろいろありまして。それがいまUnityソリューションカンファレンスのきっかけになっています。
– 今回、ヤマハがUnityおよびユニティちゃんとの共同プロジェクトを実施するに至った理由をお聞かせください。
石川まずはUnityのポリシーですよね。ゲーム開発、アプリ開発を民主化していくというポリシーへの強い共感、リスペクトがヤマハの中にもありまして、Unityというのはすごく興味深いプラットフォームだと思っていました。その中にユニティちゃんというキャラクターができていて……。これってすごく日本発、日本らしい文化の発信だと思うんです。それから、Candy Rock Starが出て、その中で歌って踊って、走り回ってというのを見て、逆に我々はそこにもどかしさを感じたんです。「ここまで動いているのに、なんで歌って固定されているのだろうか?」と。
そこで、我々のエンジンをUnityエンジンにつないでいこうとするときに、まずUnityに乗せよう、そして、ユニティちゃんを歌わせようっていう目標はわりと早い段階からあったんです。
当然、まだ当時ユニティちゃんの声はなかったので、我々の持っている汎用的なライブラリを使ってCandy Rock Starを勝手に改造する形で、我々のエンジンを組み込み、歌える状態まで作っちゃったんですね。そこからはもうエンジニアリングのチームは私も驚くくらいノリノリで作業を進めていて、「石川さんもう歌っちゃいましたよ」って。
そこで、「次はどうしましょう?」という話になり、「じゃ、ちょっとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンさんに行くか」というのがきっかけなんです。
我々のチームはVRのムーブメントも、みんなしっかり見ていますので、ここに我々のエンジンを一緒に乗せてもらうことで面白いことができるんじゃないかという想いがチームの中にありました。
ユニティちゃん Candy Rock Star ライブステージ!
– ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン側はこの話を受けていかがでしたか?
小林僕ら的にはウェルカムでしたね。僕はそのとき、そこまで深く考えてはいませんでしたけど、京野はVOCALOID文化をよく知っていましたので、ボカロ界隈のユーザーの受け取り方についてはずいぶん慎重なところはありましたね。
「とりあえずは、よくわからないところもあるけど、面白いことはOK」、もともとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンはそういう会社なので。「広げつつも問題点は拾っていくみたいな感じでやればいいんじゃないの」と。基本はそういう感じで、進めましょうと早い段階で決まりましたね。
ユニティちゃんとVOCALOIDの
コラボレーションによって生まれたUCL2.0
– 今回、すでにキャラクターとして確立しているユニティちゃんに対してVOCALOIDのカルチャーを乗せていくというところに、特に心配や不安、気にする部分というのはありましたか?
石川そこはありました。不安といいますか……慎重にいかなくてはいけないと自分たちでも確認しながらユニティ・テクノロジーズ・ジャパン側にもいろいろと伺ったところです。今お話にあった京野さんがご心配されているところも、我々もとてもよくわかったんです。
先にキャラクターがあって、いわゆるVOCALOIDというすでにある文脈に乗っかってしまうっていう不安は必ずあると思っていたんですね。ですが、ちょうどいいタイミングで小林幸子さんのVOCALOIDを作らせていただいていて、バーチャルキャラクターではないですけど、リアルな実力派演歌歌手の方をVOCALOID化するにあたって、我々はそこをどう捉えて、どう作らせていただいたらいいんだろうというのも考えていたんです。ユニティちゃんも、リアル、バーチャルの違いはありますけど、すでに確立されているキャラクターをどんな風に我々は歌声ライブラリ化させていただけるか、という。
– お話があってから走り始めるまでがかなりスピーディーだったということですが。
石川そうですね。試作したCandy Rock Starの改造版をもうお持ちして、見ていただいたんですよ。「ヤマハはいまここまでできていて、ユニティちゃんの声で歌っていないのが残念でならないので、これをやらせてください」とすごくわかりやすい形のメッセージを伝えまして。
小林すでにもうあの段階でピッチを変える仕組みが入っていましたよね。「これ、そのままでも音ゲーになりそうですね」みたいな感じで。ほとんど完成しているくらいだったんです。今回のお話は、どちらかというと技術というよりはコンテンツ的なディレクションだということがわかったので。わりと早い段階でとんとんと話が進みましたね。
実際、一番難しかったのはその後に公開するポリシーの話で。特に『ユニティちゃんライセンス』で公開したいというのがありましたので、これが実は意外と大変でした。結果的にUCL2.0の改定と一緒に行う形で進めさせていただきました。
この件に関してはヤマハ側のご理解とご協力がなければ出来なかったところです。ユニティちゃんの精神を伝えるという意味でも今回のプロジェクトはありがたかったかなと思っております。
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収録と並行して進んだライセンス条項の見直し
– では、プロジェクトの流れを時系列で追いかけますと……。
石川2015年6月に、最初のバージョンをご覧いただいて、「やりましょう」という話になって、7月にはもうパイロット版の声を録りはじめていました。
小林目標として「8月の末に発表したい」というのがあったので、それに間に合わせるように逆算すると7月にはスタートしていないとダメだったんです。
石川8月のCEDECにあわせてヤマハとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとの共同プレスリリースを出して、そこで発表をしたい、Candy Rock Starでユニティちゃんを歌わせたい。そこで、大急ぎで7月の中旬くらいに角元さんにスタジオに入っていただいて、最初のテスト収録をしました。
– そこから改めて本収録を?
石川そうですね。改めて、ディレクションというか企画会議を実施して。どんな方向性の声にまとめていくか、先ほどもあったキャラクターに関する心配事を深くディスカッションして、どういう形でVOCALOIDデビューしてもらうべきかという議論をしながら収録をして作りこんでいきました。
– ユニティちゃんにはもともとライセンス条項があります。これは今回のプロジェクトにとって、どういった意味を持ちましたか?
石川ユニティちゃんはクリエーターにとっての象徴的なアイコンでもあるので、クリエーターさんにとって使いやすい、クリエーターさんがユニティちゃんを歌わせてみたいと思ってくれなければダメだと考えていました。まずは『ユニティちゃんライセンス』を勉強して、なるべくそれに準ずる形でやりたいと思っていて。
今回のプロジェクトは創造のためのプラットフォームなので、既存のものではダメだと思っていたんですよ。そこに『ユニティちゃんライセンス』というものがあって、そこに乗せていただくことで、同じくクリエーターさんに認知していただけるのであれば、ちょっと頑張ってそこに乗せるべきであろうという方向性で、自然にそちらに行きましたね。
– ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとしては、ユニティちゃんがVOCALOIDになるというのはある程度想定はされていたという話がありました。ですが、話が具体化するにあたって、どういったライセンスの見直しをされたのでしょうか。
小林あらためてキャラクターの部分と純粋なデジタルな部分はどう違うのかというところをわける必要があり、そこのところを考えました。今回の件の中で言うならば、SDKの純粋なプログラムの部分は、本来アセットストアEULA下で配布されるソリューション的な部分だろうと思うんですよ。ただし、その中に含まれるライブラリという部分には各キャラクターを演じる声優さんやディレクターさんの演出が入っているんです。これはキャラクター的な部分であろうと。
そういうところがすごく重要で。そこをどう分けるべきか、どう使うべきかというのを改めてもう一度考えた上で……さらに重要だったのは、これは僕らだけで決められないことでもある、という理解です。
それはなぜかというと、すでに元の『ユニティちゃんライセンス』がある程度一般的に認知されているからです。僕たち側でひっそりと『ユニティちゃんライセンス』を改訂してもいいんですけど、それが知られないようだと意味がないわけです。今回の改訂については、弁護士にいろいろと相談をしながら、より使いやすいように変更をしていきました。
– ヤマハ側からは、改訂にあたって、変更や調整の希望をだされましたか?
石川お願いという形ではなかったんですが、先ほどの心配事の中のひとつに、角元さん演じるユニティちゃん、VOCALOIDのユニティちゃんが同時に存在しえなくてはいけないと我々も思うので、「そこに対するプロットはとても大事ですよね」というお話はさせていただいた記憶があります。そこはもう当然ながら京野さんもおわかりで、プロット作成の段階から、コミュニケーションをしっかりとることができました。
配布に関するライセンスのところでは、当初我々は一般的な世の中の考え方でヤマハのSDKとユニティちゃんの声は別々のライセンスで配布されなくちゃいけないと思っていた……思い込んでいたんですね。そこをユニティ・テクノロジーズ・ジャパン側にお話したら「クリエーターのためには一緒になっていたほうがいいんだから、一緒に配れる方法を考えましょう」とおっしゃっていただいて。
– このプロジェクトは、歌声ライブラリを含むSDKが無償公開されています。そして、『ユニティちゃんライセンス』のもとに個別に許諾、契約は不要です。そうなると、お互いどこで儲けるんだ、という議論がでてくるかと思います。そこについては、石川さんはどうお考えですか?
石川ひとつはボトムアップのムーブメントというところですよね。一般のクリエーターの方を巻き込んで、新しいことに挑戦したい、しかもヤマハでは全容が見えていない、何が起こるかわからないようなことを仕掛けたいと思っていたので、広く使っていただく必要があるだろうというところを考えました。
また、無償という言葉が独り歩きしてしまうと、これまでのビジネスとの関係みたいなところについて、社内から心配が出てきますので、「ユニティちゃんが背負っている宿命といいますか、背負っているコミュニティ、その範囲で使ってもらう分には無償にしますよ」という形にしました。「既存のVOCALOIDのライブラリを含めて我々のプラットフォームとして使う場合はビジネススキームを作ります」というところで、わりと長い説明をあちこちでした記憶はあります。
3Dモデル、ボイス、VOCALOIDが加わった
ユニティちゃんのこれから
– ユニティちゃんには3Dモデルがあり、角元さんの声というものがあり、さまざまなグッズ展開があり、さらに今回VOCALOIDも追加されました。これからのユニティちゃんは、いったいどこに向かおうとしているのでしょうか。
小林我々が話をしているところでは、「もうそろそろかたまったひとつの世界観、ひとつのパッケージ、そういうものが必要ではないか」というものがあります。そのパッケージを作る仕込みとして、ドラマCDを作っているんですが、そういうのがある一定数かたまってくると、火が付く流れが出てくるので、そこに少しずつ流していくというのを進めている最中です。いずれにしても、キャラクターものというのはこちら側が仕掛けて上手くいくというものでもないので、「結構長いスパンでやろうかな」くらいの感じでやっていました。ただ、現時点ではこちらの想定の1~2年早いくらいで回っているなというのがありますので、むしろいまは丁寧に作っていくことを第一に考えています。
– ヤマハとしては、ユニティちゃんの世界と、VOCALOIDの技術が出会ったことでどのようなことが起きると思われますか?
石川楽曲制作以上に、「こんな風に歌って欲しい」という願望というか妄想というか、そこが加速していってほしいなと思っていて、歌ってもらえる存在としてどんなことを望んでいるんだろうっていうのを……ふんわりしていますけれども、アプリケーションの形でインタラクティブな要素として、見えてきたらヤマハとしてはすごく楽しいなと。
それから、クリエーターさんのテリトリーとクロスオーバーしていく期待もあって。例えばVOCALOIDのPさんと呼ばれている方々の知見ですよね。「このパラメーターをこうやるとこんな風に歌うんだよ」っていう知見があって、それがゲームやアプリのクリエーターさんと結びつくことで、「このシーンはこんな風に歌ってほしい」というところに、うまく答えがくっつくといいなと思っているんですよ。そこのクロスオーバーは我々も積極的に支援していかなくてはいけないと思っています。
– いままで、 VOCALOIDという楽器に触れたことがなかった人たちに対して、楽器を見せて、プレイも見せて聴かせて、「さぁ、あなたならどう使う?」という状態ですね。
石川そうですね。我々としても、「歌わせたい」という漠然としたものをデータとして形にしていけるようなミドルウェアに相当するもの、そこをヤマハとしても作っていかなくてはいけないですし、もしかしたら、フレームワークだけ作っておいて、中身は皆さんに作っていただくのがいいのかもしれない。それにしても、その仕組みづくりはいるだろうなと。
細かい話ですけど、現状、VOCALOIDの制御シーケンスはUnityから全部触れるところまで作ってあるのですが、それってあまりに乱暴というか……「全部見えるんだけど、どこをどうしたら、どんな風に歌うの?」っていうところの知見はまだそこにないんですね。知見を蓄積していけるようなフレームワークは作らなきゃなぁと思っています。
Unity with VOCALOID インタビュー Vol.02
7月 22nd, 20164日間にわたって行われた歌声ライブラリの収録
– 角元さんにVOCALOID歌声ライブラリの収録オファーがあったのはいつ頃ですか?
角元オファーがあったのは、2015年の夏ですね。そこから仮収録と本収録が3回あったので、スケジュールとしては計4日間ご一緒させていただきました。
もちろん、VOCALOIDのお仕事は初めてです。ユニティちゃん自体が今までリリースされてから、ありとあらゆる試みを取り組ませていただいてきたので、いよいよかという印象ではありましたね。
それくらい手広くやっていて、いつVOCALOIDになってもおかしくないキャラクターに育っていたので、そういう意味では「えっ? VOCALOIDになるんですか?」みたいな違和感はなくて。むしろ、それがすごくうれしかったです。
– まず、今回収録することになった歌声ライブラリについて、馬場さんからご説明いただけますでしょうか。
馬場簡単にいうと、声のもとになる人にその人自身を演じていただいて、その声質や歌唱に含まれる特長的な部分を封じ込めるように作成した声のデータベースを歌声ライブラリと呼んでいます。
もう少し具体的にご説明すると、どのような言葉の組み合わせでも歌唱合成できるよう、単語が列記されている原稿を特定のルールに沿って、またその人の声の音域をカバーするためにいくつかの音程を設定させていただいて、音程ごとに日本語版の場合で500個、英語版の場合で2500個程度の声の素片を集めてひとつにまとめたものです。
– 角元さんはそういった形の収録は初めてだったんでしょうか。
角元初めてです。声優として歌うこと、ユニティちゃんとしてしゃべることはあっても、しゃべるトーン、歌うトーンでパーツを打ち出していくという作業は経験したことがありませんでした。
VOCALOIDの歌声ライブラリはこういう風にできていくんだっていう純粋な驚きとともに、「こりゃ大変だぞ」っていうのが仮収録の段階でひしひしと伝わってきて。苦労しつつも、助けていただきながらやらせていただきました。
– 今回の収録は、合計で4日間ということでしたが、これは平均的な歌声ライブラリ収録期間でしょうか?
吉田はい。スケジュール感はだいたい一緒ですけれども、人によってはテスト録音をもう少し増やしたりだとか、本番録音がスムーズにいったので短くしたりだとかはあります。
– テストと本番の一番の大きな違いはどこにありますか?
吉田テスト録音というのは、角元さんがユニティちゃんを演じるにあたってどういう音域の声がどのくらいの強さ、声色で出せるのかを確認する意味もありますし、角元さん自身に本番ではこういうことをやりますっていうのをお伝えする意味もあります。
できた歌声ライブラリを実際にVOCALOIDで聞いてみて、「こういう声になるんだったら上の音域はもっと強いほうがいいんじゃないか、下の音域はもう少し弱いほうがメリハリがついていいんじゃないか」といった試聴面でのテストもあります。
– それではテストが終わってから本番の収録までは少し時間をとるんですね。
吉田はい。テストが終わってからチーム内でミーティングを行って、どういう歌声ライブラリを生み出すのか、どういう録音をしていけばいいのかを決めていきます。
「これはユニティちゃんなのかな?」と思いながらの収録
– 角元さんは、今回の収録で一番大変だったことってなんでしょうか。
角元私が声優として仕事をしている中で、3日間にわたって、ほぼ一日中これだけ声を出し続けるという収録は経験したことはありませんでした。
音のパーツを録る際は私がユニティちゃんになりやすいような単語を選んでくださったので、聞こえるようなパーツにはなっていたんですけれども、それでも普段慣れないことだったのでいくつかある音域の高い、普段気にせず使っている音域でずっと保つということが非常に大変だったかなとは思いますね。
– 歌や映像作品の収録であれば、事前に歌詞や台本が渡されるわけですが……。
角元はい、当日収録の現場でのお話を受けて、やってみましょうということで予習はほとんど……。復習は多少できたにしても、そんなにやってしまうと喉を枯らしてしまうので。もう行ったその場でですね。
本番の3日間はユニティちゃんであり続けましたし、なおかつ今回の歌声ライブラリを作るにあたって、ユニティちゃんのこの挑戦的な顔に似合うような声を出すようにというディレクションを多く受けていました。
– そんな中で、楽しめたことはありましたか?
角元今回の収録をやっていくことで、「ユニティちゃんってこういうところもあるな」っていう再発見につながりましたし、スタッフの皆様のお力によってVOCALOIDができていく様子を目の当たりにできました。
また、声出しをする際に、「こういう風にノリノリな歌で声だしをしましょう」と私が選んだ曲で声出しをやりました。普段私がカラオケで歌う曲をいくつか歌って、再度練習として流す頃には声出しで歌った曲がもうVOCALOIDとして歌っていてビックリしました。
– ゴールがだんだん近づいてくる。VOCALOIDは、初日から2日目に成長し、2日目から3日目に成長し、とだんだんクオリティが上がっていくようなイメージなのでしょうか?
吉田そういうわけでもないですね。日によって「今日はこの辺をやりましょう」とか、「次の日はこの辺をやりましょう」という風にやっているので、だんだん歌声ライブラリのクオリティが上がっていくというよりは、音域ごとのピースがはまっていくという感じですね。
角元そうでしたね。「この音域で試しに歌わせてみたらこんな風になった」って、さっきまで自分が歌っていた歌でVOCALOIDが歌っているのがすごく新鮮で。
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VOCALOIDと人間のデュエット
– そして、今回、ご自身の VOCALOIDとデュエットをされましたが、どんな気分でしたか?
角元今回、「デュエットする」という話をきいて、「誰とするんだろう?」と思っていたんですね。それで、当日行って「このAKAZAっていうのはどなたなんでしょう」とお伺いをすると「角元さんのVOCALOIDです」と説明を受けまして。それは全部CV角元ということですかというところで驚いたのがまずひとつありますね。
それから、VOCALOIDと人間の声があまりにも違いすぎちゃいけないなというのをレコーディングで心がけていました。
もちろん、私とVOCALOIDで違いは出したいんですけれども、あまりにも差があるとデュエットの意味がないなと。デュエットっていうのはあくまで2人の声があっているのがいいし、ハモリだったらハモリでVOCALOIDのほうにあわせてあげたいなっていう感覚で歌っていたので。曲自体の収録はスムーズで2時間もかからなかったです。
割とその曲自体も4分音符が多く、あまり動く曲ではなかったので、音程を正しく歌うことでしっかりデュエットできたのかな、と。実際に聞いてくださった方からの感想を見ると「どっちが角元さんでどっちがVOCALOIDなのか一瞬わからなかったです」というご意見をいただけて。それはやっぱりAKAZAがそれだけすごいんだなっていう。私の歌癖とかもしっかり受け継いでいますし。
– レコーディングはどんな風に行われたんですか?
角元デュエットのときは別録りで、私単体で歌いました。このときはまだVOCALOIDの音声は入ってなかったんじゃないかな。ただデモの音声は全部VOCALOIDでそのデモを聞いていました。
– 実際に完成した楽曲を聴いてみたときの印象は……。
角元率直に言うと私自身はAKAZAと私自身の声を聞き分けられていたんですね。ですが、「一瞬わからなかった」という感想をいただいたときにびっくりしちゃって。自分の聞いたときの感覚と他の人が聞いたときの感覚が違うのは仕方ないのかもしれないのですが……。
小林AKAZAというのは、ある瞬間の角元さんの魅力を記録して、データベースにしたものだと思うんです。
その瞬間の角元さんの声がサンプリングされているという特徴がありますので、そういう意味で角元さんの、つまりユニティちゃんの歌う雰囲気が出て欲しいというのはあったんですけれども、当然角元さんは生きていらっしゃるし成長するし変わっていくんですね。
当然その2つは違うだろうという意識もあったわけです。
どっちが上とか下とかそういう話ではなくて、同じなんだけどちょっと違うというか、入れ物はちょっと違うけれども魂は同じみたいな。
角元さんが聞いたときに「違うな」っていうのは当然そうだろうなって納得する部分もあるし、みなさんが聞いたときに「どっちだ?」ってなるのも面白いし。
角元AKAZAが歌っているところが「私に似ているな」って思うところもありましたし、私が歌っているところが「ここは人間じゃないと出てこないよな」っていうような音域や、発音の仕方が感じられるようになってきて。これは何度も聞くと印象が変わってくる感じですね。
小林「最終的に2人いる」っていう感じになるんです。これが非常に面白い。
馬場歌声ライブラリのデザインを考える上でも、まさにこの絵の感じをイメージしていました。イメージが重なりあったり、分かれたりする部分があって。重なっているときはユニティちゃんイコール角元さんというイメージもありつつ、でも少し違う部分、もしかしたらそれは表に出てこないユニティちゃんの隠れた部分かもしれないけど両面を持っている・・・そういうイメージでしたね。でも角元さんらしいところはきっちりと押さえて表現したいというのは終始念頭に置いていました。
角元聞いていて、「私にできないことできますよ、この子!」って思いました。
歌声ライブラリ作成にあたってのこだわり
– 今回、歌声ライブラリを作成するにあたって、どういったコンセプトから始まったのでしょうか?
馬場他の歌声ライブラリとの違いを出す意味で、躍動感を持たせたかったということが挙げられます。私たち制作チームがユニティちゃんを初めて見たのはUNITE IN THE SKYのプロモーションビデオだったんですが、ステージ上を歌い踊りながら、所狭しと駆け回るユニティちゃんのイメージが強く印象に残ったからです。そのイメージに相応しい歌声でなければならないし、実現させるために何をすべきか考えた結果、普段の歌声ライブラリ制作ではやらないようなこともいろいろ試させていただきました。
ユニティちゃん Candy Rock Star ライブステージ!
馬場先ほどもご説明しましたとおり、通常の収録作業では単語が列記されている原稿を、声の調子を合わせながら読んでいただくわけですが、角元さんには「ステージ上から最前列のお客さんに話しかけるように」とか、「アリーナの一番遠くにいるお客さんに届くように」とか、声の出し方について様々な注文を出させてもらいました。
ユニティちゃんならこうするだろうという気持ちになりきって、躍動感溢れる声を出してもらう必要があったからです。音素として採取するのはごく短い素片に過ぎませんので、素片だけを聞いてもどれだけ躍動感が盛りこまれているのかはわからないとは思います。でもそのひとつひとつの素片に魂が吹き込まれることによって、合成した際の結果が大きく変わってきますので、可能性があるアイデアについてはすべてトライさせてもらいました。
通常はマイクに向かって直立不動で声を出してもらいますが、角元さんには身振り手振りのアクション付きで、ときには録音ブースの中でぴょんぴょん飛び跳ねたりしながら、ステージ上のユニティちゃんになりきって演じてもらいました。動いたり飛び跳ねたりすると足音やノイズが入ってしまうので収録の際にはタブーですけれど(笑)
台本とは別にセリフをしゃべってもらったりカラオケを何曲か歌ってもらったりして、その収録データからも声の素片を採集していって歌声ライブラリに追加していった点も、他の歌声ライブラリには無い特徴と言えます。これは大きな違いですね。
角元他の人はやっていないんですか
馬場やってないんですよ(笑) ただユニティちゃんらしさを演出していく上で、セリフ回しや話し方に含まれている特徴もできるだけ盛り込んでいきたいと思いましたので、かなり無理なお願いもさせてもらいながら追加していく形で制作を進めました。
– そういったことを収録時にやることで、どの辺が変わるんでしょうか。
馬場歌声を合成するソフトウェアなので、「できるだけ歌声に近い声を出してください」と、みなさんに共通してお願いするのですが、台本を読んでいるうちにどうしても話し声に近くなっていきがちなんです。
しかし実際に歌ってもらったり、あるいは普通の人が言わないようなテンションや抑揚で声を出してもらうことで、声のトーン変化や強弱の違い、あるいはピッチ変化であったり、声に含まれる特徴や癖のような部分を、より多く盛り込んでいくことができるんです。
V3までの歌声ライブラリは、どのような楽曲にもフィットしやすく、またコントロールパラメーターを使った表情付けがしやすいよう、比較的フラットな出力音を目指して制作されていました。しかし現行のVOCALOID4シリーズの歌声ライブラリは、できるだけ中の人の特徴を生かしながら「個性」を出すように心がけていますので、そういった部分の変化が重要な鍵となるわけです。
吉田ユニティちゃんの歌で時々すごく生々しく聞こえるときがあるんです。そういったところで今のような試みがいきているのかなと感じますね。
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歌声ライブラリを使いこなすためのキーワード
「いじればいじるほど」
– それでは、歌声ライブラリを使いこなすためには、あるいはこういったところに気を遣うとそのキャラクターを活かすことができるというのはありますか。
馬場「いじればいじるほど隠れている部分が見えてくる」というのがありますね。特徴や癖を盛り込んでいるといっても、VOCALOIDの合成エンジンの仕組み上、合成されて出てくる音はある程度フラットになって出力されます。ところが、そこにもともとあったダイナミックスカーブやピッチカーブを書き入れることで、ベタ打ちの状態のときには表れない声に含まれている要素が見えてくるわけです。
ユニティちゃんのイメージとして最初に思ったのは、単にかわいくて元気で明るい女の子というだけではなくて、ちょっと生意気だったり、あるいは普段人には見せない顔を持っていたりという裏側の魅力も入れ込んで表現したいと思っていたわけで……そういえば収録のときに無理なお願いを出させてもらったのも、角元さんをむっとさせてリアルにそういう声を出してもらおうとかそういう思惑もあったりしました。もし気を悪くされていたらこの場をお借りして謝罪いたします。
角元大丈夫です!
馬場安心しました(笑)
さておき、ユーザーの方には、とにかくユニティちゃんをいじり倒してみてくださいとお伝えしたいです。いじればいじるほど、何かしらの形で応えてくれるよう仕掛けがしてありますので。
– VOCALOIDの歴史の中で、開発者として「ここまで行くだろう」と想定されている使い方っていうのはいろいろとあると思いますが、ご自身が「こういうところまできたか」と驚かれたものは今までにありましたか?
吉田開発の当初は「プロが仮歌で使ってくれるツールであればいいかな」という思いで作ったんですが、だんだん初音ミクが出てきたころから雰囲気が変わってきて、それでCDがランキング1位になったり、2000年のころには全然予想していなかったことが起きてきて。さらにいま、Unity with VOCALOIDとして歌声ライブラリ込みのSDKをリリースするなんて2007年ごろには予想できなかったことだと思います。
楽曲制作者向けにも満足いただける非常にポテンシャルの高い歌声ライブラリを作ることができたということと、簡単にVOCALOIDを扱えるSDKを用意することができた、というのが今回のプロジェクトの大きな意義ですね。
– 今回のユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとのコラボレーションにあたって、Unity側のエンジニアの方がVOCALOIDに、VOCALOIDをやっている方たちが今度はゲームエンジンに、というある意味大きな橋がかかった印象があります。これから2年、3年といった長い期間で見ていくと、その橋を渡ってものすごいものができるのかなと。
馬場いままで音楽を作る人の手に渡っていたものがプログラマーさんの手に渡ることで、そこから何が生まれてくるのかという点に関しては、想像することが難しかったりしますが、両者のコラボレーションであったり、あるいは僕らが想像しないようなまったく新しい使い方をする人達が出現したりして、新たな波として広がっていくことにはとても期待しています。どんなものが生まれるのか今から本当に楽しみです。
石川歌ってたぶん声だけではできてないんですよね。そのときの歌手の表情だとか……。デュエットするにしてもアイコンタクトとかがすごく大きいような気がしています。Unityだとトータルでその歌の表現を超えたところまで作り出せるというところでもう一段階、深い表現ができるのかなと。
小林ゲームを作っている側から言いますと、歌に入っている声というのは言葉だけではないんですよ。音なんだけど感情を含んでいるという特殊なもので。言葉に頼らなくても感情が十分に伝わる表現だとかそういうのが可能なんです。
もしかしたら何千年経ったあとでVOCALOIDの歌声ライブラリデータだけが残っている可能性もあるわけですよ。そのときにそれを聞いた人が何を思うのかなと、そういうのを表現できたら面白いかなと。
声優にとってのVOCALOIDとは
– 声優の角元さんにとって、VOCALOIDはいったいどんな存在なのでしょうか?
角元これからユニティちゃんを動かすプログラマーの人たちがVOCALOIDでセリフをしゃべらせるようになっちゃったら、私の仕事もいくつかとられてしまったかも……みたいな気持ちもあったりはします。でも、そのほうがしゃべらせたいワードが出てくるんだとは思うんですけれども。
VOCALOIDにしゃべらせたセリフ、VOCALOIDをトーク用の素材として使用するという使い方は、いままでもしていらっしゃると思うんですけれども、それがより自然に聞こえるようになっているのが今回のユニティちゃんということで、そこに大分ライバル意識はありつつ、VOCALOIDには絶対できないことも私たち声優にはできるだろうっていうのもあって。負けないぞっていう気持ちが強いですね。
– 声優として、VOCALOIDになるっていう喜びと、自分の声の場所が奪われるかもしれないという恐れと……。
角元私が何十年もやっているベテランさんであれば、ある程度はあったのかもしれないんですけれど、私自身、新人だということでその辺のこだわりがないのと……。これは角元明日香ロイドではないので。
あくまでユニティちゃんがVOCALOIDというのが念頭にあったので、抵抗などは全くなかったですね。
小林生声のユニティちゃんの価値がむしろ高まるんじゃないか、というのもあります。ワンショットのよさっていうのがあるじゃないですか。その瞬間を切り取ったその価値が改めてわかるというか、そういった意味では面白いんですよね。
– VOCALOIDを歌手として、あるいは楽器として使っている人たちもいる中で、角元さんにとってのVOCALOIDはどんな位置づけになるんでしょうか。
角元私は単純にオタクみたいなところがあるのですが、みなさんそれぞれVOCALOIDのビジュアルに対して愛着をもっていらっしゃるんじゃないかと思います。
直接VOCALOIDを触っている方も触っていない方もいらっしゃると思うんですけれども、こうやってどんどん人間に近づいているところを見るとすごく魅力的ですね。単純に仕事としてのライバルとして見ているわけではなく、とても魅力的で個性的なものがどんどん生まれているので、「これからどれだけ増えていくのかな、どんな新しい子が生まれてどんな変化がついていくのかな」というのが1人のファンとして楽しみです。
– 次期VOCALOIDにバージョンアップしたり、歌声ライブラリとして取り扱うべき音素が増えたりしたときに改めて収録し直す可能性はありますか?
吉田もし、そういうチャンスをいただけるのであればもう一度全部録り直したいですね。
今のユニティちゃんの声が2015年の角元さんの声を元にしていますから、2020年にまた作るとなったときには、そのときの角元さんの声でやるのが自然かなと思います。そのころには我々の技術も向上しているので……。もしかしたら録音が大変になるかもしれませんが、よりリアルなものを再現したい。
– 角元さんが、実際にVOCALOIDを一緒に作ったところで、見えてきたものはありましたか?
角元私自身のつたなさが大分浮き彫りになったなっていうのもありつつ……。ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの皆さんが私を選んでくださった時点で、私の成長=ユニティちゃんの成長という風にきっと考えてくれていたんだろうなというのがあったので、きっと2020年版のユニティちゃん歌声ライブラリを録るときにはもっともっとVOCALOIDにできることが増えているでしょう。もちろん、VOCALOIDにしかできないこともあるし、人間にしかできないこともあるので。それぞれの畑で頑張ればそれがきっと刺激になることもあるでしょうし。そういう意味で、これからが本当に楽しみです。
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VOCALOID、歌声ライブラリを今収録する意義
– 声優や歌手にとってVOCALOIDとはいったいどういうものなのか、そしてなぜ、今VOCALOIDの歌声ライブラリを録るべきなのか……。
馬場この10数年を振り返ってみると、我々制作側のスキルやノウハウが足りずに、中の人の魅力を再現できていなかった部分がたくさんあったと思います。ですが、毎回新たなチャレンジを繰り返しながら、特徴や魅力的な要素を活かす方策について研究してきた結果、再現性をかなりのレベルまで高められるようになりました。「平坦で味気ないもの」のようにVOCALOIDを捕え、それを理由にいままで躊躇していた人たちには、「もうそのような心配はご無用ですからぜひ来てください」とお伝えしたいです。
もうひとつはVOCALOIDの認知度の違いですね。ある意味マニアックでニッチな技術としてスタートしたVOCALOIDですが、ニコニコ動画等への投稿や初音ミクのブレイクで世の中的にも広く認知されるようになる中で、音楽をつくる人と絵を描く人とのコラボであったり、コミケへの広がりだったり、カウンターカルチャー的に発生したものが色々な人や物を巻き込みながらメインストリームとして市場形成されていったことで、VOCALOIDに対する感じ方も昔とは大きく変わったのではないかと思います。
間口が広くなったからと言って「どなたでもウェルカム」というわけにはいきませんが、我々の技術やVOCALOIDを取り巻く動向に興味を持って来てくださる方には、できるだけその気持ちに応えたいと思いますし、精一杯のクオリティでお返ししたいと思いますので、我こそはという方はどんどん手を挙げていただきたいですね。
– ヤマハという会社はVOCALOIDのシーンについて、鷹揚に構えている印象を受けます。それは、やはり、VOCALOIDを楽器として、ユーザーのツールとしてとらえているからなのでしょうか?
馬場VOCALOIDを取り巻く状況というのは、ユーザーやリスナーの方々に育てていただいたと言えます。開発側が想定していなかったところで利用され、ここまで広まってきたのです。そこから僕らも沢山のことを学ばせていただきましたし、これから先も学んでいくためには、常に柔軟で開いた姿勢でいなければいけないなと思っています。
石川根っこは歌っていうそのものの根源的な部分だと思うんです。歌が歌われるところにも硬軟ありますし。だからこそどんなシーンでも歌があっていいじゃないかというスタンスにつながっているのかもしれないですね。
ユニティちゃん歌声ライブラリのこれから
– ローンチがやっと終わったところでこういった質問をするのも何ですが、今回の歌声ライブラリ収録にあたって、「もう少しここはつめられたな」とか、「もう一回やるならここはさらに詰めてみたい」というようなところはありますか?
吉田制作自体はずっとこもってやっていたんですけれども、もっと曲を録っておけばよかったなっていうのはありましたね。UNITE IN THE SKYも普通のバージョンであったり、ライブのときのバージョンであったり、カラオケで歌ったときのバージョンだとかそういった声のバリエーションを録っておけばもっと広がりがあります。
それがうまくいくというのが我々としてもよくわかったので、これから歌声ライブラリを作るときは20曲、30曲くらい……と、練習してもらう必要があるかもしれませんね!
馬場そうですね。無制限の時間を与えられればトライしてみたいことはいくらでも挙げられますが、「期限内にひとつの歌声ライブラリを作ってください」という条件下では、今回はやるべきことをやりきれたかと思います。もちろん他の可能性はいろいろと考えられます。吉田が申しているようにバリエーションを増やすのもありでしょうし、パンクなユニティちゃんなんていうのも面白いですよね。ただ、躍動感を盛り込むという当初の目標はある程度クリアできたと思いますので、個人的には今回は達成感の方が強いです。
収録作業を振り返ってみて思うのは、この歌声ライブラリは角元さんじゃないと実現できなかったということです。声の出し方について注文した際に、「そんなのやりたくない」といわれたらそれまでじゃないですか。でも角元さんはどんな無理難題をいっても常に全力で要望に応えてくれました。ユニティちゃん歌声ライブラリが特別なものになった理由はそこに尽きると思います。
角元自分自身ではユニティちゃんの歌声ライブラリのために与えてあげられる素材を出しきれるほど自分がまだ声優として成長してないなと思ったので、「もっとこういうことできたら」というところがありますね。「もっともっと音域が出たらこういうことできただろうなー」とか……。
馬場今できることの中で精一杯やってくれるということがとても重要なんです。ベストなパフォーマンスをしてくれた角元さんには心から感謝していますよ。
先ほど、他の声優さんもどんどん手を挙げていただきたいといいましたけれども、「できる、できない」という意味ではかなり高いハードルがあります。長時間にわたる収録作業は肉体を酷使しますし、「いじめじゃないか!?」と思うほど、やってもやっても終わらない作業量を強いられますからね。めげずに最後までやりきれる根性、プロ意識、そういうものがないと中の人になるのは難しいと思います。
吉田今回のプロジェクトでは、「ユニティちゃんのVOCALOIDを作ろう」という目指すべきゴールが共有できていたので、すんなり進んでいきましたね。
石川先にキャラクターのイメージが共有できていたっていうのもあると思います。VOCALOIDはキャラクターが同時に作られることが多かったんですけれども、今回すでに存在するユニティちゃんというキャラクターをどんな形で切り取ってどう閉じ込めようかというのをみんなでディスカッションできたのがよかったのかなと。
角元そこにはヤマハの皆さんが大変気を使ってくださっていて……。スタジオの中はユニティちゃんまみれでした。目の前にポスター後ろにポスター譜面台にユニティちゃんみたいな。ユニティちゃんに囲まれて、ユニティちゃんを忘れないように。
– それでは、最後に皆さんから今回のプロジェクトの感想をいただけますでしょうか。
角元私自身、自分の声でVOCALOIDの歌声ライブラリを作っていただけるなんて本当に一生あるかないかのことなのですごくありがたくて。いっぱいその歌声ライブラリを使った曲を聞けるというのもこれからすごく楽しみだし、私の声でこんなことができるんだっていう発見もしたいですし、こんなうまい歌を歌えるんだなっていうライバル意識にもつながるのでどんどん上手に歌を歌わせてほしいですね。そして様々な魅力に気づいてほしい。そして、ユニティちゃんのことにも興味を持ってほしいし、ちょっとでも私の本職のほうも気にしてくれたらうれしいです。
多くの発見が確実にあるVOCALOIDなので、ぜひぜひ楽しんでいただけるとありがたいです。
吉田声優や歌手の皆様に宣伝ですが、これからのVOCALOIDは、楽曲やPVといった音楽作品だけではなく、Unity上で制作されるゲームなどのアプリケーションでもどんどん使用されるようになってきます。到着駅の1つとしては考えられるVRの世界では、こっちの現実世界とは異なるリアルさが求められはずです。あっちの世界で歌声の分身を活動させて、いろんなメディアに展開して、驚くような体験を多くの方と一緒にできたらと思います。一緒にVOCALOIDを作って攻めていきませんか?よろしくお願いします。
馬場もともと音楽畑ではない人たちがUnity with VOCALOIDをどんなふうに使うのか興味津々です。既存の音楽にカテゴライズされない新しい音楽であったり、音楽とは関係ない使い方が生まれてきたりするかもしれませんよね。今まで見たことも聞いたこともない新しいものができてきたら、それはそれで新しいムーブメントに繋がる可能性もあるわけですし、そういった未知の可能性を考えるとほんとワクワクします。
一方で音楽を作る側の人たちには、その人にしか出来ないことを表現するためのツールとしてどんどん活用していただきたいです。曲づくりとはその人の気持ちや思いを形にすることですが、VOCALOIDが少しでもそのお手伝いをできるのであれば、開発提供する側としてもうれしい限りです。
Unity with VOCALOID インタビュー Vol.01
7月 15th, 2016Unity with VOCALOID プロジェクトの始まり
– Unity with VOCALOIDについてお話を伺っていきたいと思います。まず、ヤマハとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、いままで協業関係はあったのでしょうか。
大前VOCALOIDに関していうと、いままではあまりなくて、ヤマハというよりはクリプトン・フューチャー・メディア(VOCALOID「初音ミク」のリリース元)との関係が深かったです。というのは、初音ミクのオーケストラ『イーハトーヴ交響曲』やBUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボレーション楽曲、PVなどでクリプトン・フューチャー・メディアが積極的にUnityを使っていて。VOCALOIDのコミュニティや開発者との関わりの方が多かったですね。
Unityにとって、MMD(MikuMikuDance)のコミュニティやVOCALOIDのコミュニティに親和性の高さは感じていて、いろいろなところで交錯するような世界にはいたんですよ。
隣接していて、お互いどちらにも足を踏み込んでいる開発者やクリエイターがいるというのがわかっている状態ではありました。
– 今回のUnity with VOCALOIDについて、「UnityにVOCALOID SDKを搭載したい」というお話が最初だったのか、それとも「ユニティちゃんをVOCALOIDにしたい」というお話が先だったのでしょうか。
大前VOCALOID SDKです。技術のほうが先ですね。これは僕がする話ではないのかもしれませんが、ヤマハとしてはこれからもずっとVOCALOIDを展開していく中で、VOCALOIDというテクノロジーができる幅をより広げたいということで、新しい可能性を考えられていました。
そこで、「リアルタイムにUnityの上で動作するもの」という方向性を検討されて、その技術というものがある程度検討がついたところで提案をいただきました。それが2015年の6月くらい。ですから、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンに話をいただいてから、実際は半年くらいで形になったということになります。もちろんヤマハ側ではそれより前からやられていたと思いますが。
そのときは、UnityにVOCALOIDを乗せたプロトタイプを見せてもらって、「こういうことがやりたいんだけれども、一緒にやりませんか」と提案をいただきました。
– UnityにVOCALOID SDKを乗せたい、という話を聞いたとき、どんな印象を受けましたか。
大前僕はこれについてはやればできると思っていたので……ヤマハが実際に作られたことに関しては驚きがあったんですけれども、いわゆるその模索する方向性としては「こんなことを考えちゃったんだ!」という驚きよりは、「ついに来たか!」という感じでした。この話は、周りのコミュニティや開発者の視点から見てあってしかるべきピースだとは思っていたので、それが本当に来たって感じですね。
– Unityから声をかけるべきだったんじゃないか、というところもありましたか?
大前そうですね……。ただ、僕らから「やりませんか」って声をかけるのも無責任なので、「そういうのがあればいいのに」っていう気持ちはあったんですけれども。話を聞いたときは「本当に作りやがったか!」みたいな感じですよ。
「このSDKは素晴らしい。これを無料で配るおつもりはありますか?」
– 今回のプロジェクトで、Unity側のサポート体制はどのように編成したのでしょうか。
大前テクノロジー面については、彼らは素晴らしいエンジニアですので私たちがサポートしなくてはいけないところはほとんどなくて、その辺りはほとんどお任せでした。
もちろん、何かしらの問題があれば一緒に解決するような体制にはなっていましたけれども、実際には我々の方が手を動かして一生懸命解決しなければならないような問題はほとんどなかったです。
それ以上に、これをどうやって開発者のみなさんに浸透させていくのか、使ってもらっていくのか、というような配布モデルや、開発者のコミュニティにインパクトのある形でこれをどう提案するかといったところ、こういった内容をユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとしてサポートしていきました。これは結構なチャレンジが必要な部分でもあるので、そういったところでの協議であるとか相談、調整ですね。
– 具体的には?
大前最初にこの話をいただいたときに、「このSDKは素晴らしい。これを無料で配るおつもりはありますか?」というところから始まりました。つまり、「これを売り物にすると広がらないよ」と伝えました。
これはSDKだけれども、テクノロジーであり、プラットフォームである。そこは我々がよく分かっていることで、このプロジェクトはテクノロジーとして素晴らしいけど、そこにコンテンツがのらないと使い物にならないというか……真価を発揮するための力を感じることができない。そこに何かしらの息吹を感じさせるコンテンツが必要だろうということで、「ユニティちゃんを無料でつけませんか」というのを伝えました。そうしたらヤマハ側も「そのつもりできました」と。両方ともそのつもりだったんですね。最初からお互いの目線が一致していました。
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UnityにVOCALOID SDKが存在する意味
– 大前さんにとって、UnityにVOCALOID SDKがのることにどんな意義があると考えていますか?
大前インタラクティブなものを作るときに、リアルタイムにユーザーとか何かしらの入力があってはじめて歌ができあがる、というのが大きなポイントです。さらに、エフェクトもリアルタイムでかけられる、環境が変わったとしてもオーディオのエコフィルターがかかるといった、そういったライブ体験を作るといったときにはいいのかなと思います。
実際、Unityのオーディオ機能をそのまま組み合わせて使えるようになっているので、そういった意味ではVOCALOIDの歌をリアルタイムで生成していくこともできます。それに対してリアルタイムにオーディオエフェクトをかけていくとか、モーションと組み合わせていくとか、そういうことができるところがポイントかなと。
UnityとVOCALOIDが組み合わさったときに何が生まれるのかは、わりと未知数なところがあって、どういう風に使われるのが面白いのかというのは、我々もヤマハ側でも見えていない。ただ、ひとつわかっていることは、リアルタイムモーションキャプチャーとかをそういったオーディオのフィルターやVRなどと組み合わせたときに、歌を通じてユーザーが体験できるライブコンテンツとか、ライブエクスペリエンスをやるときにかなり重要なピースのひとつになるだろう、ということがあります。これがあることによって他のものはリアルタイムに変わっていきますし、環境に適応してライブ体験として作りこめる。
歌だけは完全に人が歌うということもできるんですけれども、それではないところで歌のミッシングピースを埋める技術になるので、そういったものと組み合わせて新しい体験につながっていくのではないかなと。
ゲームではなくて新しい歌の聞き方とか新しいキャラクターボイスの楽しみ方といったところに大きな可能性があるんじゃないかなと思っています。
– Unity側からVOCALOIDを解釈したときと、VOCALOID側からUnityを解釈したときに、何か新しいものが生まれる可能性がある。
大前そうですね、VOCALOIDでコンテンツを作っている人たちとMMDでコンテンツを作っている人たちとはやはり親和性がありますし、MMDを使ってコンテンツを作っている人たちとUnityを使ってコンテンツを作っている人たちとで親和性がある。
そこに、ビジュアルやキャラクターボイスというものを歌として使いたいといったときに、大きな架け橋になるんじゃないかなと。
Unity with VOCALOID公開直後の反応
– SDKが公開されてからどんな動きがありましたか?
大前SDKが公開されてからびっくりしたのは、SDKの中のユニティちゃんのボイスというのはVOCALOID4向けのエンジンに組み込む形のものではなかったにもかかわらず、いきなりユニティちゃんの曲がいっぱい生まれ始めたことです。
カバー曲が多いんですけれども、SoundCloudに3日目で60曲くらいあがっていてすごくビックリしました。
– それは日本のクリエイターの方がアップロードされていたんですか?
大前これは海外のクリエイターの方が多かったですね。かなり海外のクリエイターさんの心を刺激しているのが強いんだなというのがわかったところと、それから意外だったのが当然日本のクリエイターさんも活動されているんですけれど、もっとニコニコ動画にアップロードされるのかと思ったらSoundCloudのほうが断然あがってくるんですね。VOCALOIDを使った作家さんの活動領域ってSoundCloudのほうに移っているんだなと。
それから、SDKを使ったインタラクティブなシーンとしてはユニティちゃんを使ってしゃべらせてみるために、VOCALOIDでテキストを打つとしゃべってくれるツールを作った人がいたり、そういった使い方ががちょこちょこと生まれてきていますね。
– Unity側として想定外の使い方が出てくるのも面白いですが、大前さんが「こんな使い方をしたら面白いんじゃないか?」と思うものはありますか?
大前そうですね、まずはやっぱり素直にバーチャルライブを作るのが一番楽しいんじゃないかなと思います。環境を変えてみたり、色んなところで歌わせてみたり、オーディオフィルターをかけてみたり。どんな曲でもその場でリクエストすればVSQXをとってきて歌い始めるとか……。まずは素直に使ってみるといいですね。それをやっているうちに面白い感じになっていくと思います。
– まずはVOCALOIDを使ってみて、その上でUnityとVOCALOIDで何ができるのかというのを模索して。
大前そうですね、僕らよりはVOCALOIDのエディターとかに日々触れていて、「こういうことができればよかったのに」ってモヤモヤを感じている人たちがいると思うんですね。
その人たちが自力で何とかしてきた部分とか、VOCALOIDエディターだけではどうにもならなかった部分というのを発露していくんじゃないかなと。
そういった気づきが何回か、誰かがエポックメイキングなことをするとですね、これってありなんだっていう体験からつながってくるんじゃないかなと思うので。
– 今後、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとして、ユーザー参加型の企画は考えていますか?
大前やりたいですね。まずは「Unity with VOCALOIDを出したので触ってみてください」というステージではありますが、これからみなさんがどういう使い方をしているのか、どういうコンテンツが出てくるのかを見ながら企画して呼びかけていきたいと思っています。具体的にはどのタイミングがいいかは考えているところですが、ニコニコ超会議くらいのタイミングでは何か面白いことが一緒にできたらいいなと思っていますね。
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VOCALOIDになるべくしてなったユニティちゃん
大前ヤマハからVOCALOIDの話が来たときに、「これは逃げられない話だ」と思ったんですよ。
– といいますと?
大前ユニティちゃんって実は最初からVOCALOIDの準備をしてあったんです。最初に声優さんのオーディションなどをするときの条件として「VOCALOID化を断らない人」っていうのが入っていて。ご存じの通り、ユニティちゃんは新進気鋭の声優さんである角元明日香さんという方にやっていただいています。僕らがいわゆる大御所的な声優さんを起用しなかったのはいくつか理由があるんですけれども、その理由の一つがVOCALOID化というのがあって。キャラクターのボイスとして定着されている方はそういうのを嫌がったりする方もいますし、僕らでは払えないようなライセンス料をお支払いする可能性もありましたし。
また、基本的な理念としてこのユニティちゃんの声を『ユニティちゃんライセンス』のもと、自由に使えるものにしたいというのがあったので、そういった条件にご同意いただける方かつ、ユニティちゃんのイメージに合う方をオーディションして決めさせていただいたんです。そのタイミングから「やるかどうかはともかく、VOCALOID化はできるようにはしておこう」というのがあったんですね。
僕らは最初からユニティちゃんが日本の開発者コミュニティにとって必要なピースであるという確信があったのでやっていたんです。ユニティちゃんのVOCALOID化をしようとなって、6月からオファーをいただいたときに12月にVOCALOID4を出せる状態に持っていけたのも最初からそういうのが入っていたからなんですね。
– いつ話があっても大丈夫なように調整はできていた。
大前そうですね。ある意味ユニティちゃんのプロジェクトはいろいろな人の好意やプロジェクトに対する理解で成り立っているんです。ただ、その前提条件として途中からプロジェクトの前提条件を変えないっていうのがあって。最初から我々の理念に同意いただける方と一緒にやってきています。
– いままで、ゲーム内にユニティちゃんが出演したり、オリジナルステージがあったりと、いろいろなコラボレーションがありましたが、規模感で言うと相当大きいプロジェクトですね。
大前これが最大級だと思います。実際にVOCALOIDの歌声ライブラリを一個作るといったところまでやっているので、最大級のコラボのひとつだと思いますね。
キャラクターとしてのユニティちゃんとVOCALOIDの狭間にあった悩み
– これからのユニティちゃんの方向性について伺います。公式Webサイトに掲載されている『ユニティちゃんライセンス』のもとであれば、どのような形でもコラボレーションできる、というのは今後も変わらないわけですね。
大前もちろんです。ラインセンスも2015年の12月にVer.2.0になってさらにゆるく明確になったので、今までよりも使いやすくなっています。なので、前にダメかもと思ったことでも、今だったらできる可能性があります。実際に、海外からもオファーがあって海外のゲームにユニティちゃんが登場もしています。
ただ、ユニティちゃんはVOCALOID向けに作ってきたキャラクターではないのでそれは結構大変でしたね。
– キャラクターの設定という意味で、ですか?
大前はい。VOCALOIDって歴史のあるファンも多いコミュニティなので色んな解釈のされ方をしていたりはするんですが、VOCALOID向けのキャラクターっていうのはバックグラウンドがそもそもVOCALOIDで歌うキャラクターなんです。VOCALOIDの声が正の声というか……本当の声として存在する。
でもユニティちゃんの場合は違って、角元さんの肉声があって、角元さんの歌っている声もあって、しゃべっている声もいっぱいあってそれらを自由に使うことができる。つまり、ユニティちゃんというキャラクターそのものが1人の生きているキャラクターとして存在しているんですね。
では、「ユニティちゃんをVOCALOIDとして歌わせるというのはいったいなんなのだろう」ということを考えなければいけないですよね。それこそ小林幸子さんに対するサチコロイドとかそういうようなことであったりするんですけれども。
僕らがそういったものを作るときに「こはくロイド」を作りたかったのか、そういったようなキャラクターのセッティングにするべきなのか。それとも世界観としてVOCALOIDとして歌ったユニティちゃんというものと、それと角元さんがユニティちゃんとして歌っている歌が存在するときに世界観として両立させたいといったときにどうすればいいのかという空白が生まれてしまうんですよね。僕らとしてはこれが大きな問題かなと思っていて。
ですから、そこが一番すごく難儀したところです。考えすぎたかなくらいの気持ちもちょっと思ってはいます。もう少しシンプルでもよかったかもしれない。ですが、これが多くの人に理解されるとうれしいですね。
立ち絵素材第三弾【こはくちゃんズ小碓学園制服ver】登場!
4月 28th, 2016GW前の大行進もとい大更新!
昨日予告した通り制服バージョンのこはくちゃんズの準備が整ったのでレッツ公開!
データの構造は第一弾~第二弾同様に高解像度PNGの他、レイヤー未統合のPSDが入ってるので色々弄って遊んでみておくれ!
(黒い制服も結構かっこよかったよ)
▼ DATA DOWNLOAD ▼
Unityには宴っていうアドベンチャーゲームツクール的な機能がアセットストアで販売されていて、
これを使うとエクセル管理でアドベンチャーゲームが作れちゃうんだぜ!
宴(AssetStore)
https://www.assetstore.unity3d.com/jp/#!/content/15905
宴 公式サイト
http://madnesslabo.net/utage/
このアセットの作者さんもユニティちゃんの立絵素材を使ってサンプル等作ってくれているので、
記事も参考にしつつ、最大10連休と言われる今年のGW、いっちょUnity使ってゲーム作ってみるのもいいんじゃないかニャー?
ntny