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Unity With VOCALOID プロジェクトが
スタートしたきっかけ

- Unity With VOCALOID プロジェクトがスタートしたきっかけを教えてください。

石川まずはVOCALOIDについてお話をさせてください。VOCALOIDそのものを発明したのは先代プロデューサーの剣持 秀紀で、「音楽制作の中でヴォーカルパートも作れるものを」というところからはじまったのですが、いろんな形でみなさんに受け入れていただいてひとつのムーブメントになったあとに、「音楽制作はいわゆるパッケージコンテンツだけじゃなくてインタラクティブコンテンツの領域まで、楽曲制作ではなくて、UXを演奏していく部分にも歌声合成って使っていただけるのではないかな」と、そういう想いがあったんです。私が後任で来たときに、「そういうテーマでチャレンジしてみたい」とプロジェクト内で話をしたら、メンバーが賛同してくれまして、そこから企画を始めたのがきっかけです。

- VOCALOIDカルチャーに対するアプローチのひとつとして、このUnity With VOCALOIDが出てきたということですね。それでは、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとヤマハは、いままでどのような関係があったのでしょうか?

小林実はヤマハとは色々なところでお付き合いがありまして、ヤマハ発動機とは、Unityのゲーム以外の利用事例を発表していただいたことがあります。それを皮切りに、他に非ゲームではどんな事例があるのかと調べてみたら結構いろいろありまして。それがいまUnityソリューションカンファレンスのきっかけになっています。

- 今回、ヤマハがUnityおよびユニティちゃんとの共同プロジェクトを実施するに至った理由をお聞かせください。

石川まずはUnityのポリシーですよね。ゲーム開発、アプリ開発を民主化していくというポリシーへの強い共感、リスペクトがヤマハの中にもありまして、Unityというのはすごく興味深いプラットフォームだと思っていました。その中にユニティちゃんというキャラクターができていて……。これってすごく日本発、日本らしい文化の発信だと思うんです。それから、Candy Rock Starが出て、その中で歌って踊って、走り回ってというのを見て、逆に我々はそこにもどかしさを感じたんです。「ここまで動いているのに、なんで歌って固定されているのだろうか?」と。
そこで、我々のエンジンをUnityエンジンにつないでいこうとするときに、まずUnityに乗せよう、そして、ユニティちゃんを歌わせようっていう目標はわりと早い段階からあったんです。
当然、まだ当時ユニティちゃんの声はなかったので、我々の持っている汎用的なライブラリを使ってCandy Rock Starを勝手に改造する形で、我々のエンジンを組み込み、歌える状態まで作っちゃったんですね。そこからはもうエンジニアリングのチームは私も驚くくらいノリノリで作業を進めていて、「石川さんもう歌っちゃいましたよ」って。
そこで、「次はどうしましょう?」という話になり、「じゃ、ちょっとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンさんに行くか」というのがきっかけなんです。
我々のチームはVRのムーブメントも、みんなしっかり見ていますので、ここに我々のエンジンを一緒に乗せてもらうことで面白いことができるんじゃないかという想いがチームの中にありました。

ユニティちゃん Candy Rock Star ライブステージ!

- ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン側はこの話を受けていかがでしたか?

小林僕ら的にはウェルカムでしたね。僕はそのとき、そこまで深く考えてはいませんでしたけど、京野はVOCALOID文化をよく知っていましたので、ボカロ界隈のユーザーの受け取り方についてはずいぶん慎重なところはありましたね。
「とりあえずは、よくわからないところもあるけど、面白いことはOK」、もともとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンはそういう会社なので。「広げつつも問題点は拾っていくみたいな感じでやればいいんじゃないの」と。基本はそういう感じで、進めましょうと早い段階で決まりましたね。

ユニティちゃんとVOCALOIDの
コラボレーションによって生まれたUCL2.0

- 今回、すでにキャラクターとして確立しているユニティちゃんに対してVOCALOIDのカルチャーを乗せていくというところに、特に心配や不安、気にする部分というのはありましたか?

石川そこはありました。不安といいますか……慎重にいかなくてはいけないと自分たちでも確認しながらユニティ・テクノロジーズ・ジャパン側にもいろいろと伺ったところです。今お話にあった京野さんがご心配されているところも、我々もとてもよくわかったんです。
先にキャラクターがあって、いわゆるVOCALOIDというすでにある文脈に乗っかってしまうっていう不安は必ずあると思っていたんですね。ですが、ちょうどいいタイミングで小林幸子さんのVOCALOIDを作らせていただいていて、バーチャルキャラクターではないですけど、リアルな実力派演歌歌手の方をVOCALOID化するにあたって、我々はそこをどう捉えて、どう作らせていただいたらいいんだろうというのも考えていたんです。ユニティちゃんも、リアル、バーチャルの違いはありますけど、すでに確立されているキャラクターをどんな風に我々は歌声ライブラリ化させていただけるか、という。

- お話があってから走り始めるまでがかなりスピーディーだったということですが。

石川そうですね。試作したCandy Rock Starの改造版をもうお持ちして、見ていただいたんですよ。「ヤマハはいまここまでできていて、ユニティちゃんの声で歌っていないのが残念でならないので、これをやらせてください」とすごくわかりやすい形のメッセージを伝えまして。

小林すでにもうあの段階でピッチを変える仕組みが入っていましたよね。「これ、そのままでも音ゲーになりそうですね」みたいな感じで。ほとんど完成しているくらいだったんです。今回のお話は、どちらかというと技術というよりはコンテンツ的なディレクションだということがわかったので。わりと早い段階でとんとんと話が進みましたね。
実際、一番難しかったのはその後に公開するポリシーの話で。特に『ユニティちゃんライセンス』で公開したいというのがありましたので、これが実は意外と大変でした。結果的にUCL2.0の改定と一緒に行う形で進めさせていただきました。
この件に関してはヤマハ側のご理解とご協力がなければ出来なかったところです。ユニティちゃんの精神を伝えるという意味でも今回のプロジェクトはありがたかったかなと思っております。

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