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Unity with VOCALOID プロジェクトの始まり

- Unity with VOCALOIDについてお話を伺っていきたいと思います。まず、ヤマハとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、いままで協業関係はあったのでしょうか。

大前VOCALOIDに関していうと、いままではあまりなくて、ヤマハというよりはクリプトン・フューチャー・メディア(VOCALOID「初音ミク」のリリース元)との関係が深かったです。というのは、初音ミクのオーケストラ『イーハトーヴ交響曲』やBUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボレーション楽曲、PVなどでクリプトン・フューチャー・メディアが積極的にUnityを使っていて。VOCALOIDのコミュニティや開発者との関わりの方が多かったですね。

Unityにとって、MMD(MikuMikuDance)のコミュニティやVOCALOIDのコミュニティに親和性の高さは感じていて、いろいろなところで交錯するような世界にはいたんですよ。 隣接していて、お互いどちらにも足を踏み込んでいる開発者やクリエイターがいるというのがわかっている状態ではありました。

- 今回のUnity with VOCALOIDについて、「UnityにVOCALOID SDKを搭載したい」というお話が最初だったのか、それとも「ユニティちゃんをVOCALOIDにしたい」というお話が先だったのでしょうか。

大前VOCALOID SDKです。技術のほうが先ですね。これは僕がする話ではないのかもしれませんが、ヤマハとしてはこれからもずっとVOCALOIDを展開していく中で、VOCALOIDというテクノロジーができる幅をより広げたいということで、新しい可能性を考えられていました。
そこで、「リアルタイムにUnityの上で動作するもの」という方向性を検討されて、その技術というものがある程度検討がついたところで提案をいただきました。それが2015年の6月くらい。ですから、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンに話をいただいてから、実際は半年くらいで形になったということになります。もちろんヤマハ側ではそれより前からやられていたと思いますが。
そのときは、UnityにVOCALOIDを乗せたプロトタイプを見せてもらって、「こういうことがやりたいんだけれども、一緒にやりませんか」と提案をいただきました。

- UnityにVOCALOID SDKを乗せたい、という話を聞いたとき、どんな印象を受けましたか。

大前僕はこれについてはやればできると思っていたので……ヤマハが実際に作られたことに関しては驚きがあったんですけれども、いわゆるその模索する方向性としては「こんなことを考えちゃったんだ!」という驚きよりは、「ついに来たか!」という感じでした。この話は、周りのコミュニティや開発者の視点から見てあってしかるべきピースだとは思っていたので、それが本当に来たって感じですね。

- Unityから声をかけるべきだったんじゃないか、というところもありましたか?

大前そうですね……。ただ、僕らから「やりませんか」って声をかけるのも無責任なので、「そういうのがあればいいのに」っていう気持ちはあったんですけれども。話を聞いたときは「本当に作りやがったか!」みたいな感じですよ。

「このSDKは素晴らしい。これを無料で配るおつもりはありますか?」

- 今回のプロジェクトで、Unity側のサポート体制はどのように編成したのでしょうか。

大前テクノロジー面については、彼らは素晴らしいエンジニアですので私たちがサポートしなくてはいけないところはほとんどなくて、その辺りはほとんどお任せでした。
もちろん、何かしらの問題があれば一緒に解決するような体制にはなっていましたけれども、実際には我々の方が手を動かして一生懸命解決しなければならないような問題はほとんどなかったです。
それ以上に、これをどうやって開発者のみなさんに浸透させていくのか、使ってもらっていくのか、というような配布モデルや、開発者のコミュニティにインパクトのある形でこれをどう提案するかといったところ、こういった内容をユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとしてサポートしていきました。これは結構なチャレンジが必要な部分でもあるので、そういったところでの協議であるとか相談、調整ですね。

- 具体的には?

大前最初にこの話をいただいたときに、「このSDKは素晴らしい。これを無料で配るおつもりはありますか?」というところから始まりました。つまり、「これを売り物にすると広がらないよ」と伝えました。
これはSDKだけれども、テクノロジーであり、プラットフォームである。そこは我々がよく分かっていることで、このプロジェクトはテクノロジーとして素晴らしいけど、そこにコンテンツがのらないと使い物にならないというか……真価を発揮するための力を感じることができない。そこに何かしらの息吹を感じさせるコンテンツが必要だろうということで、「ユニティちゃんを無料でつけませんか」というのを伝えました。そうしたらヤマハ側も「そのつもりできました」と。両方ともそのつもりだったんですね。最初からお互いの目線が一致していました。

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