ユニティちゃんの生みの親の苦悩が生んだAKAZA
- キャラクターとしてのAKAZAについても教えてください。
ntnyぶっちゃけた話をすると、ユニティちゃんがVOCALOIDになると言われたときに自分は反対しました(苦笑)
これ、クラスタに属している方こそ自覚していないケースも多いんですけどVOCALOIDって本当に、凄く巨大なんですよ。
初音ミクは知っているけどVOCALOIDだって知らない人がいるって言われて信じられます?
自分も以前一部の特異なクラスタに浸かっていたことがあるんですけど、そこにいると自分の持っているメジャーと世の中のメジャーの単位が違うことに気づかないんですよ。
近くで見ているか遠くで見ているかの違いというか、定規って目に近づければ1mm、1mm…1cm、10cm、みたいに区切られているのがわかりますけど、目から離して1cmが1mmに見えるくらいの距離に置いた場合って、その定規を測定するための定規が必要になるんです。
今どのくらい離しているかっていう。クラスタにどっぷり浸かっていると、その定規を図るための定規の存在を知れない、気づけない。
逆に巨大な物を見慣れていると今度は「1mmなんて誤差」って思えてしまう。これが怖いんです。
何故ならクラスタにいる方々はその「1mm」どころか更にその下の単位まで見ているし、重視する。
お互いに持っているメジャーの違いを理解しないまま土足で入り込んでひどい目に遭うことって結構見てきましたし、体験もしました。
ゆえに、すでに巨大な物となっているVOCALOIDという分野に入り込むことにはとにかく慎重を期したかったのです。
大前が先にも言っていますが、VOCALOIDになれることはひとつのキーワードではありましたし、自分としてもいつかは……と思っていましたがまさかこんなに早くなろうとは。
ユニティちゃん自身の時間と言う意味でも、自分自身の時間と言う意味でも、とにかく足りなかったんです。
さぁ困りました。
自分はユニティちゃんというキャラクターを作り出しましたが、それは全てゲーム開発者のための物として設計されています。
VOCALIOD向けのキャラクターとして設計している部分はほぼない。
となるともう「ゲーム開発者のためのデザイン」を捨てるところからだと。しかしこれが結果として自分すらも混乱させることになりました。
- その落としどころとしてAKAZAが生まれた?
ntnyうーん、これも最初のテキストありきの話になるんですが、あの中に出てくる「どっかの偉い人」の側面で言うとそういうことになります。
自分でもわからなくなっていたところに、絵としてポンと「良い」のが生まれてしまって。でもこの段階で彼女は中身を何も持っていなくて。
だから今回はテキストや設計より先にビジュアルが生まれているんです。
最初のオーダーとして「デュオで歌う」というがあったので、ユニティちゃんという存在を反転させるところからだったんですが、ある意味目的としてもコンセプトとしてもそれは正しかったなと思います。
- 今回の歌声ライブラリは、ユニティちゃんの歌声ライブラリなのか、それともAKAZAの歌声ライブリなのでしょうか?
ntnyうーん(笑)
PROJECT:AKAZAの世界としてはAKAZAの声でもあり、そのAKAZAの元になっているのはユニティちゃんであり。
唯一つ言えるのは、この二人は「オナジモノ」であり、ユニティちゃんの歌声ライブラリでもあればAKAZAの歌声ライブラリでもあります。
DL版パッケージに二人入っていることで「二人分入っているのでは?」と、誤解を招いてしまったことは申し訳なく思いますが、どちらも「彼女」です。
- その辺りを補完する公式設定を充実させていくおつもりですか?
ntny作りますよ。
ただそれが小説であるか、ドラマCDであるか、ゲームであるか、はたまたアニメであるかは現時点では未定です。
- もし、二人がドラマCDなどで共演するとして……ユニティちゃんは角元さんがやるとして、AKAZAはVOCALOIDがやることに?
ntnyきっとAKAZAは喋りませんね。AKAZAは喋らない方が面白いと思う。あんまり喋らせると折角の美味しいポジションが無くなっちゃうし(笑)
それに、VOCALOIDは世の中の人たちからするとキャラクターですけど、僕にしてみれば「どっかの偉い人」同様、唯のシンセサイザーなので。
- 楽器なんですね。
ntnyあくまでも僕にとってですよ。
あまりキャラクターに語らせ過ぎてしまうと「AKAZA(のキャラ)にこの曲は歌えない」みたいなことを思い始めちゃう可能性がある。そうなると本末転倒じゃないですか。
これって中期VOCALOIDクラスタで実際に起こっていた話ですよね。初音ミクとかの創作が増えてきて、UGCの特徴としてそこに生まれた共感がパワーになって「常識化」していく。
常識化していくと、その常識から外れようとすると「非常識!」って言われる。そうして離れていった人を何人か知っています。
そういった文化を知らずに入ってきて好き勝手やる人を凶弾するような時代があったんです。作った側は「あぁ、何てことだ」って思っていたんじゃないかな。
少なくとも自分は何処まで行ってもVOCALOIDは楽器であってキャラクターという認識は持っていません。例え初音ミクであっても自分にとっては唯の楽器です(ちなみに発売当日に買いました)。
でもAKAZAはユニティちゃんに出会ったことできっと変わってしまいますね。
彼女は自己を持ち始めるでしょうし、その先については「どっかの偉い人」は知りませんしきっと関与もしないでしょう。
僕個人としては褐色銀髪が大好物なので色々なAKAZAを描いてみたいところです。
- AKAZAはどういった経緯であの容姿になったのでしょうか。
ntnyラフスケッチを見ると肌色が褐色ではなく白人っぽいんですよね。
ntny最初期は「ユニティちゃんの亜種」として考えていたのでこんな感じになっているんですが、それらを一旦リセットした段階で褐色にすることを決めました。
これ、日本のキャラクターシーンだと結構嫌がられるんですけどUnityなら何の問題もなかろうと、誰の許可を得るでもなく進めていました。
ntny日本の場合って女性キャラクターをメインとしているコンテンツの多くは女性キャラクターだけを増やしていくじゃないですか。
自分はそれが嫌でしょうがなくて、最初から男キャラクターをちゃんと仕込んでいっているんですが、まぁ皆黄色であったり白であったりといったところはやっぱり国内向けなんですよね。
次に出すべきキャラクターがいるとしたら褐色だと。
海外の人からすると肌の色って凄く重要なんです。まぁ我々にも言えることではあるんですけどね。「結局白肌ばっかりじゃん?」って。
ちょうどユニティちゃんと対に立たせなければならない条件があったので、これはしめたとばかりに褐色銀髪を投入しました。
出来たイラストの凄く不満を持っていそうな顔が最高に気に入っています。
- 日本では公式から出たキャラクターはあまり疑問を持たずに受け入れる傾向にありますか?
ntnyそうでもないですね。
やっぱり「AKAZAって何?」って質問は多かったです。海外からも結構ありましたけど、日本でも普通にありました。
まぁそりゃ何の説明もないので当たり前だよねって感じですが。
(勿論順序立てて出したかったんですけどね、これも反省点です)