123

UnityにVOCALOID SDKが存在する意味

- 大前さんにとって、UnityにVOCALOID SDKがのることにどんな意義があると考えていますか?

大前インタラクティブなものを作るときに、リアルタイムにユーザーとか何かしらの入力があってはじめて歌ができあがる、というのが大きなポイントです。さらに、エフェクトもリアルタイムでかけられる、環境が変わったとしてもオーディオのエコフィルターがかかるといった、そういったライブ体験を作るといったときにはいいのかなと思います。
実際、Unityのオーディオ機能をそのまま組み合わせて使えるようになっているので、そういった意味ではVOCALOIDの歌をリアルタイムで生成していくこともできます。それに対してリアルタイムにオーディオエフェクトをかけていくとか、モーションと組み合わせていくとか、そういうことができるところがポイントかなと。
UnityとVOCALOIDが組み合わさったときに何が生まれるのかは、わりと未知数なところがあって、どういう風に使われるのが面白いのかというのは、我々もヤマハ側でも見えていない。ただ、ひとつわかっていることは、リアルタイムモーションキャプチャーとかをそういったオーディオのフィルターやVRなどと組み合わせたときに、歌を通じてユーザーが体験できるライブコンテンツとか、ライブエクスペリエンスをやるときにかなり重要なピースのひとつになるだろう、ということがあります。これがあることによって他のものはリアルタイムに変わっていきますし、環境に適応してライブ体験として作りこめる。
歌だけは完全に人が歌うということもできるんですけれども、それではないところで歌のミッシングピースを埋める技術になるので、そういったものと組み合わせて新しい体験につながっていくのではないかなと。
ゲームではなくて新しい歌の聞き方とか新しいキャラクターボイスの楽しみ方といったところに大きな可能性があるんじゃないかなと思っています。

- Unity側からVOCALOIDを解釈したときと、VOCALOID側からUnityを解釈したときに、何か新しいものが生まれる可能性がある。

大前そうですね、VOCALOIDでコンテンツを作っている人たちとMMDでコンテンツを作っている人たちとはやはり親和性がありますし、MMDを使ってコンテンツを作っている人たちとUnityを使ってコンテンツを作っている人たちとで親和性がある。
そこに、ビジュアルやキャラクターボイスというものを歌として使いたいといったときに、大きな架け橋になるんじゃないかなと。

Unity with VOCALOID公開直後の反応

- SDKが公開されてからどんな動きがありましたか?

大前SDKが公開されてからびっくりしたのは、SDKの中のユニティちゃんのボイスというのはVOCALOID4向けのエンジンに組み込む形のものではなかったにもかかわらず、いきなりユニティちゃんの曲がいっぱい生まれ始めたことです。
カバー曲が多いんですけれども、SoundCloudに3日目で60曲くらいあがっていてすごくビックリしました。

- それは日本のクリエイターの方がアップロードされていたんですか?

大前これは海外のクリエイターの方が多かったですね。かなり海外のクリエイターさんの心を刺激しているのが強いんだなというのがわかったところと、それから意外だったのが当然日本のクリエイターさんも活動されているんですけれど、もっとニコニコ動画にアップロードされるのかと思ったらSoundCloudのほうが断然あがってくるんですね。VOCALOIDを使った作家さんの活動領域ってSoundCloudのほうに移っているんだなと。
それから、SDKを使ったインタラクティブなシーンとしてはユニティちゃんを使ってしゃべらせてみるために、VOCALOIDでテキストを打つとしゃべってくれるツールを作った人がいたり、そういった使い方ががちょこちょこと生まれてきていますね。

- Unity側として想定外の使い方が出てくるのも面白いですが、大前さんが「こんな使い方をしたら面白いんじゃないか?」と思うものはありますか?

大前そうですね、まずはやっぱり素直にバーチャルライブを作るのが一番楽しいんじゃないかなと思います。環境を変えてみたり、色んなところで歌わせてみたり、オーディオフィルターをかけてみたり。どんな曲でもその場でリクエストすればVSQXをとってきて歌い始めるとか……。まずは素直に使ってみるといいですね。それをやっているうちに面白い感じになっていくと思います。

- まずはVOCALOIDを使ってみて、その上でUnityとVOCALOIDで何ができるのかというのを模索して。

大前そうですね、僕らよりはVOCALOIDのエディターとかに日々触れていて、「こういうことができればよかったのに」ってモヤモヤを感じている人たちがいると思うんですね。
その人たちが自力で何とかしてきた部分とか、VOCALOIDエディターだけではどうにもならなかった部分というのを発露していくんじゃないかなと。
そういった気づきが何回か、誰かがエポックメイキングなことをするとですね、これってありなんだっていう体験からつながってくるんじゃないかなと思うので。

- 今後、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンとして、ユーザー参加型の企画は考えていますか?

大前やりたいですね。まずは「Unity with VOCALOIDを出したので触ってみてください」というステージではありますが、これからみなさんがどういう使い方をしているのか、どういうコンテンツが出てくるのかを見ながら企画して呼びかけていきたいと思っています。具体的にはどのタイミングがいいかは考えているところですが、ニコニコ超会議くらいのタイミングでは何か面白いことが一緒にできたらいいなと思っていますね。

123