小林一番大きなものとしては「音楽関係のゲームを作りたい」というのがあります。音楽関係のゲームを作るというのは、技術面で特許が問題になってくることが多々ある。Unity with VOCALOIDでオープンになったインタラクションはそこを打開するきっかけとなる可能性が高いんです。そこの基本技術をヤマハが公開してくれることほど、安全なことはないんですよ。そこで作るゲームは基本的に安全なわけで。 それから、Unityがゲームを越えてインタラクション的なものに使われつつある中で、リアルタイムに音を変化させることができる要素が入ってくるのは重要だと思いました。音とのインタラクションは、ずいぶんUnityでもやっているのですが、例えばその中で「歌声までも変えることができれば大きいよね」というのがもともとあって。歌は音の中で唯一、キャラクター性があるものじゃないですか。そこに関してアプローチできるのは面白いと思っていたので、ヤマハからお話をいただいたときは願ったり叶ったりでしたね。 エンジニアにとって音は難しいものであると思っているので……今後どうなっていくのか楽しみでもあります。もし、自分がコンシューマー向け企画者だったら、ワクワク、ドキドキだと思いますよ。
– 山本さんはUnity with VOCALOIDの開発を担当されていましたが、プロジェクトが始まってからローンチまでの半年、最初の作業はどんなことをされましたか?
小林Unity 道場自体は、単純にUnityの勉強会だけではなくて、Unityに関わるゲーム開発全体の話を広く取り上げる予定があります。例えば、Unity with VOCALOIDの使い方はもちろん、そもそもVOCALOIDを使ってどう作曲するか、といった話とか。そんな事例の話をしても全然いいと思っています。重要なところだと思いますので、今後広げていきたいですね。
Unity with VOCALOIDに触れる人たちへ
– Unity with VOCALOIDをこれから触ってみようと思っている人たちに伝えておきたいメッセージがあればお願いします。
石川まずはUnityのポリシーですよね。ゲーム開発、アプリ開発を民主化していくというポリシーへの強い共感、リスペクトがヤマハの中にもありまして、Unityというのはすごく興味深いプラットフォームだと思っていました。その中にユニティちゃんというキャラクターができていて……。これってすごく日本発、日本らしい文化の発信だと思うんです。それから、Candy Rock Starが出て、その中で歌って踊って、走り回ってというのを見て、逆に我々はそこにもどかしさを感じたんです。「ここまで動いているのに、なんで歌って固定されているのだろうか?」と。 そこで、我々のエンジンをUnityエンジンにつないでいこうとするときに、まずUnityに乗せよう、そして、ユニティちゃんを歌わせようっていう目標はわりと早い段階からあったんです。 当然、まだ当時ユニティちゃんの声はなかったので、我々の持っている汎用的なライブラリを使ってCandy Rock Starを勝手に改造する形で、我々のエンジンを組み込み、歌える状態まで作っちゃったんですね。そこからはもうエンジニアリングのチームは私も驚くくらいノリノリで作業を進めていて、「石川さんもう歌っちゃいましたよ」って。 そこで、「次はどうしましょう?」という話になり、「じゃ、ちょっとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンさんに行くか」というのがきっかけなんです。 我々のチームはVRのムーブメントも、みんなしっかり見ていますので、ここに我々のエンジンを一緒に乗せてもらうことで面白いことができるんじゃないかという想いがチームの中にありました。
馬場他の歌声ライブラリとの違いを出す意味で、躍動感を持たせたかったということが挙げられます。私たち制作チームがユニティちゃんを初めて見たのはUNITE IN THE SKYのプロモーションビデオだったんですが、ステージ上を歌い踊りながら、所狭しと駆け回るユニティちゃんのイメージが強く印象に残ったからです。そのイメージに相応しい歌声でなければならないし、実現させるために何をすべきか考えた結果、普段の歌声ライブラリ制作ではやらないようなこともいろいろ試させていただきました。
吉田開発の当初は「プロが仮歌で使ってくれるツールであればいいかな」という思いで作ったんですが、だんだん初音ミクが出てきたころから雰囲気が変わってきて、それでCDがランキング1位になったり、2000年のころには全然予想していなかったことが起きてきて。さらにいま、Unity with VOCALOIDとして歌声ライブラリ込みのSDKをリリースするなんて2007年ごろには予想できなかったことだと思います。 楽曲制作者向けにも満足いただける非常にポテンシャルの高い歌声ライブラリを作ることができたということと、簡単にVOCALOIDを扱えるSDKを用意することができた、というのが今回のプロジェクトの大きな意義ですね。
吉田制作自体はずっとこもってやっていたんですけれども、もっと曲を録っておけばよかったなっていうのはありましたね。UNITE IN THE SKYも普通のバージョンであったり、ライブのときのバージョンであったり、カラオケで歌ったときのバージョンだとかそういった声のバリエーションを録っておけばもっと広がりがあります。 それがうまくいくというのが我々としてもよくわかったので、これから歌声ライブラリを作るときは20曲、30曲くらい……と、練習してもらう必要があるかもしれませんね!
馬場もともと音楽畑ではない人たちがUnity with VOCALOIDをどんなふうに使うのか興味津々です。既存の音楽にカテゴライズされない新しい音楽であったり、音楽とは関係ない使い方が生まれてきたりするかもしれませんよね。今まで見たことも聞いたこともない新しいものができてきたら、それはそれで新しいムーブメントに繋がる可能性もあるわけですし、そういった未知の可能性を考えるとほんとワクワクします。 一方で音楽を作る側の人たちには、その人にしか出来ないことを表現するためのツールとしてどんどん活用していただきたいです。曲づくりとはその人の気持ちや思いを形にすることですが、VOCALOIDが少しでもそのお手伝いをできるのであれば、開発提供する側としてもうれしい限りです。
– Unity with VOCALOIDについてお話を伺っていきたいと思います。まず、ヤマハとユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは、いままで協業関係はあったのでしょうか。
大前VOCALOIDに関していうと、いままではあまりなくて、ヤマハというよりはクリプトン・フューチャー・メディア(VOCALOID「初音ミク」のリリース元)との関係が深かったです。というのは、初音ミクのオーケストラ『イーハトーヴ交響曲』やBUMP OF CHICKENと初音ミクのコラボレーション楽曲、PVなどでクリプトン・フューチャー・メディアが積極的にUnityを使っていて。VOCALOIDのコミュニティや開発者との関わりの方が多かったですね。
大前やりたいですね。まずは「Unity with VOCALOIDを出したので触ってみてください」というステージではありますが、これからみなさんがどういう使い方をしているのか、どういうコンテンツが出てくるのかを見ながら企画して呼びかけていきたいと思っています。具体的にはどのタイミングがいいかは考えているところですが、ニコニコ超会議くらいのタイミングでは何か面白いことが一緒にできたらいいなと思っていますね。