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VOCALOIDになるべくしてなったユニティちゃん

大前ヤマハからVOCALOIDの話が来たときに、「これは逃げられない話だ」と思ったんですよ。

- といいますと?

大前ユニティちゃんって実は最初からVOCALOIDの準備をしてあったんです。最初に声優さんのオーディションなどをするときの条件として「VOCALOID化を断らない人」っていうのが入っていて。ご存じの通り、ユニティちゃんは新進気鋭の声優さんである角元明日香さんという方にやっていただいています。僕らがいわゆる大御所的な声優さんを起用しなかったのはいくつか理由があるんですけれども、その理由の一つがVOCALOID化というのがあって。キャラクターのボイスとして定着されている方はそういうのを嫌がったりする方もいますし、僕らでは払えないようなライセンス料をお支払いする可能性もありましたし。
また、基本的な理念としてこのユニティちゃんの声を『ユニティちゃんライセンス』のもと、自由に使えるものにしたいというのがあったので、そういった条件にご同意いただける方かつ、ユニティちゃんのイメージに合う方をオーディションして決めさせていただいたんです。そのタイミングから「やるかどうかはともかく、VOCALOID化はできるようにはしておこう」というのがあったんですね。
僕らは最初からユニティちゃんが日本の開発者コミュニティにとって必要なピースであるという確信があったのでやっていたんです。ユニティちゃんのVOCALOID化をしようとなって、6月からオファーをいただいたときに12月にVOCALOID4を出せる状態に持っていけたのも最初からそういうのが入っていたからなんですね。

- いつ話があっても大丈夫なように調整はできていた。

大前そうですね。ある意味ユニティちゃんのプロジェクトはいろいろな人の好意やプロジェクトに対する理解で成り立っているんです。ただ、その前提条件として途中からプロジェクトの前提条件を変えないっていうのがあって。最初から我々の理念に同意いただける方と一緒にやってきています。

- いままで、ゲーム内にユニティちゃんが出演したり、オリジナルステージがあったりと、いろいろなコラボレーションがありましたが、規模感で言うと相当大きいプロジェクトですね。

大前これが最大級だと思います。実際にVOCALOIDの歌声ライブラリを一個作るといったところまでやっているので、最大級のコラボのひとつだと思いますね。

キャラクターとしてのユニティちゃんとVOCALOIDの狭間にあった悩み

- これからのユニティちゃんの方向性について伺います。公式Webサイトに掲載されている『ユニティちゃんライセンス』のもとであれば、どのような形でもコラボレーションできる、というのは今後も変わらないわけですね。

大前もちろんです。ラインセンスも2015年の12月にVer.2.0になってさらにゆるく明確になったので、今までよりも使いやすくなっています。なので、前にダメかもと思ったことでも、今だったらできる可能性があります。実際に、海外からもオファーがあって海外のゲームにユニティちゃんが登場もしています。
ただ、ユニティちゃんはVOCALOID向けに作ってきたキャラクターではないのでそれは結構大変でしたね。

- キャラクターの設定という意味で、ですか?

大前はい。VOCALOIDって歴史のあるファンも多いコミュニティなので色んな解釈のされ方をしていたりはするんですが、VOCALOID向けのキャラクターっていうのはバックグラウンドがそもそもVOCALOIDで歌うキャラクターなんです。VOCALOIDの声が正の声というか……本当の声として存在する。
でもユニティちゃんの場合は違って、角元さんの肉声があって、角元さんの歌っている声もあって、しゃべっている声もいっぱいあってそれらを自由に使うことができる。つまり、ユニティちゃんというキャラクターそのものが1人の生きているキャラクターとして存在しているんですね。
では、「ユニティちゃんをVOCALOIDとして歌わせるというのはいったいなんなのだろう」ということを考えなければいけないですよね。それこそ小林幸子さんに対するサチコロイドとかそういうようなことであったりするんですけれども。
僕らがそういったものを作るときに「こはくロイド」を作りたかったのか、そういったようなキャラクターのセッティングにするべきなのか。それとも世界観としてVOCALOIDとして歌ったユニティちゃんというものと、それと角元さんがユニティちゃんとして歌っている歌が存在するときに世界観として両立させたいといったときにどうすればいいのかという空白が生まれてしまうんですよね。僕らとしてはこれが大きな問題かなと思っていて。
ですから、そこが一番すごく難儀したところです。考えすぎたかなくらいの気持ちもちょっと思ってはいます。もう少しシンプルでもよかったかもしれない。ですが、これが多くの人に理解されるとうれしいですね。

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